2023年8月14日 研修を通して、佐々畜産では飼養管理の「見える化」の他、「馴致」に力を入れていることが分かりました。この「馴致」にいては3つほど具体例を紹介いたします。 佐々畜産では昼間に分娩を済ませることを目的に1日1回、夕方のみ給餌する「昼間分娩誘起法」を導入しています(メカニズムに関する説明は省略させていただきますが、オキシトシンやアドレナリンといったホルモンの相互作用が関係しているようです)。この方法を開始するタイミングとして一般的なのが分娩予定日から10日〜14日前です。ただ、いつも1日2回給餌の農場では、急に1日1回給餌となると1回の給餌量が増え、食帯や軟便等が発生するリスクがあります。そこで佐々畜産では1ヶ月前から給与方法を徐々に変更するようにしています。特に粗飼料に関しては嵩が大きいため、最初は夕刻に1日量を食べさせることが個体によっては困難です。さらに体型の小さめの母牛は食帯や軟便になるリスクが上がるため、粗飼料の増量は緩やかに行います。ちなみに1ヶ月前に設定しているもう1つの理由としては予定日前に分娩が始まるケースがあるためです。 次は哺乳について紹介します。佐々畜産では自然哺乳(親付け)で自家産子牛を養っています。自然哺乳の中でも親牛の繁殖活動、子牛の消化不良性下痢や飼料摂取量改善等を目的に親との同居時間を制限する「制限哺乳」を基本としています。広い部屋の真ん中を消石灰が塗られたコンパネで仕切ることで哺乳時間を制限しているのですが、個人的に母子共に顔を見合わせられるように工夫されている点が良いと思いました。また最初は急に朝、夕の2回に制限するのではなく、朝、昼、夕の3回で訓練し、慣れさせることもストレスが少なくて良いと感じました。 続きまして繁殖母牛です。佐々畜産ではスタンチョン牛舎1号、2号と呼ばれる牛舎が存在します。これらは互いに隣接し且つ構造が同じです。この2つの牛舎を設けたポイントの1つ目はステージフィーディングです。分娩に向けて乾物量や栄養価を高める時期と妊娠維持期の少し痩せさせたい時期に分けて管理することができるようになりました。また未経産と経産を分けて管理できるのも良いと感じました。あとは隣同士ですので、牛の移動に手間が掛からないというのも大きなメリットです。 つづく |