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藤﨑ひな子のコラム
大人でも奇形?!

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2023年8月4日

 鹿児島もようやく梅雨が明けて夏本番ですね~。皆様、水運補給・塩分補給、休憩をしっかりととりましょう。

 さて今回のコラムでは1年前に出会った症例についてお話ししたいと思います。繁殖農家さんから「分娩前に膣内にセンサーを入れたいのだけれども、うまく入らない」との稟告を受けて往診しました。農場に到着し、膣内を観察する道具である膣鏡を使ってみてみると、何やら薄い膜がありました。

 実はこれ、メスの生殖器の奇形である膣の肉柱と呼ばれるものです。奇形といえば、子牛の脊椎が曲がったり神経症状だったりを示すアカバネ病などの異常産による奇形を思い浮かべることがあるのではないでしょうか。今回の奇形は、分娩する時期になってから発見された奇形です。ですので、大人になってから奇形になったわけでなく、発見時期が大人になった時だったということです。
 この膣の肉柱は中腎傍管中隔という胎児の時期に膣を形成する組織です。成長につれて消失するのですが、消失せずに残ってしまったものが肉柱となってしまいます。妊娠自体には問題はないのですが、お産の時に子牛の通り道の邪魔になってしまいますので、難産となってしまうこともあるようです。治療はこの肉柱を切除することです。
 今回の症例では肉柱が膣内の奥にあったため、はさみが届かず切除を断念しました。センサーを挿入せずに、分娩時に念入りに観察していただくようお願いしました。数日後、子牛は無事に生まれ、肉柱は子牛の産道での移動によって見事に切れていました。この母牛の肉柱は薄かったため特に難産にならずに済んだようです。
 奇形にもいろいろな種類や程度があるのだなと考えさせられた1例でした。

 
 
 
 
今週の動画
【採血】採血っていつするの?②

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