2023年7月25日 夏になると、どうしても牛舎で目に付くのが「ハエ」。主にイエバエとサシバエの2種類を牧場内でよく見かけます。先日も牧場の周りに生えている草に超大量のサシバエが休憩しておりました。どれも大量に牛さんの血液を吸っていて、お腹はパンパンに血液で膨れ上がっていました。全部のサシバエで相当な量の血液を吸っているのではないでしょうか。牛さんのストレスはかなりあると思います。ただ、今回のお話はこのサシバエやイエバエ対策ではなくて、別の問題点をお話いたします。 では、それは何かといいますと・・・・ ハエが伝染病を牧場内で広げている可能性についてです。 今までイエバエやサシバエが様々な病原性微生物を伝播しているという話はいろいろな所で聞いていました。しかし、小生が勉強不足なこともあり、イエバエやサシバエがどのような病原性微生物を媒介しているのかはただ知っているだけで、ハッキリとした実験結果を論文で呼んだことはありませんでした。 そして、嗚呼これからハエのシーズン真っ盛りやな・・・などとぼんやり思っていた時、日本獣医師会雑誌のVol.76 No.7 2023に「牛舎におけるウイルスを伝播するイエバエとサシバエ成虫対策」という論文が投稿されていました。2023年2月17日に受理された論文であり、岐阜大学応用生物科学部の清水先生らの研究報告になります。 この中で、成虫対策についていろいろ報告されているのですが、小生はそれとは別に伝染病の伝播の可能性について興味を持ちました。 今まで牛伝染性リンパ腫に関しては「アブ」がウイルスを媒介する報告はありましたが、「サシバエ」に関してはその可能性について多くの先生が言及されていましたが、実験的に確認した報告を読んだことがありませんでした。今回の研究で、牛伝染性リンパ腫がサシバエの体内に保有されていることが実験的に証明されています。そのことからサシバエにより牛群内で牛伝染性リンパ腫が広がる可能性が示唆されています。これはサシバエ対策をするうえで非常に重要なポイントだと思います。 また、イエバエがパラポックスウイルスを機械的に伝播する可能性についても示唆しています。パラポックスウイルスは丘疹性口炎や偽牛痘の原因ウイルスでもあります。小生も丘疹性口炎には過去に苦しめられました。とにかく口蹄疫と症状が似ているので、現場で遭遇するとマジでビビります。牛舎疫といって毎年夏になると発生が広がる牧場もありました。よく考えると、ハエが発生し始める時期とリンクしていたように思います。今回の結果をみて納得です! それ以外にもイエバエが大腸菌やサルモネラ菌を媒介することに関しても記載があります。この点も非常に重要なポイントです。特にサルモネラ症は北海道を中心に猛威をふるっており、対策をとる重要性が高まってきます。 昔から先人たちが衛生対策は大切だと口を酸っぱくして言っていましたが、ハエに関して改めて対策をしっかりととることの重要性を再認識いたしました。本当にこのような現場に即した論文はありがたいですね。感謝の言葉しかありません。 あとは・・・・ 農家さんと一緒に論文片手にイエバエ、サシバエ対策がんばろ~~~~ 知っていてもやらなきゃ何にもなりませんからね! |