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加地永理奈のコラム
1日1回搾乳

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2023年7月19日

前回に引き続き、ニュージーランドの酪農について聞いたお話です。
放牧型酪農である、人件費が高い、乳価設定が乳量ではない、1頭の乳量も少ない、といったNZ特有の環境から、「1日1回搾乳」という方法が、1日2回搾乳と組み合わせる人も含めて半分以上の酪農家に広がっているそうです。

1日1回搾乳にすると、やはり乳量は落ちます。しかし乳脂肪、乳タンパク質量は多い牛乳になるため、NZでは乳価が上がることが期待できます。
そして、たとえ乳量の低下が問題となっても、その分増頭でカバーすれば良いと考えるそうです。増頭分のコストのことを考えてしまいますが、それでも放牧地から牛を集めてきて搾乳するという流れが1日1回である方が良いと思えるほど、スタッフのライフスタイルの向上、人件費の削減が求められているようです。
また、ホルスタイン種と比較して、ジャージー種の方が、1日1回搾乳による乳量減少の幅が少ないというデータもあります。ジャージー種はタンパクと脂肪の高い濃縮された牛乳を24時間以上貯蓄できるため、より1日1回搾乳に適応しやすい品種といえます。
初産と4歳齢以上の経産を比較したデータでは、4歳齢以上の方が乳量の減少幅が少なく、乳房が発達していて1回搾乳に減らした際の貯乳量の増加に対応しやすいと考えられました。
他にも1日1回搾乳により、受胎率があがる、CIDRの使用率が減るといった繁殖面の改善データもみられました。

「1日1回搾乳」は、スタッフの働きやすさ、経費の削減など、人側のメリットを目的に普及し始めたのだと思われます。
ただ、2回から1回に減らす期間は牛にストレスをかけてしまいそうですが、牛もそれに適応してしまえば、エネルギー消費も少なく、牛にとってもメリットとなってくれそうです。
 
 
 
 
今週の動画
シース管と使った採尿

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