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藤﨑ひな子のコラム
浮腫⑨~膠質浸透圧編③~

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2023年7月7日

 今週の水、木、金は牛の餌屋さんである中国物産さんと中国地方の農家さんの巡回に来ております。初めての一人巡回ではありますが、どの農家さんも優しく迎え入れてくださりました。農家さんをはじめ中国物産さんと多くの方々に大変お世話になりました。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。

 さて、前回のコラムでは、血液中のアルブミンが減少する(低アルブミン血症)原因に低栄養状態があげられることについてお話ししました。この低栄養状態はビタミンA欠乏とも関わります。今回のコラムでは、低アルブミン血症になる他の原因についてお話ししたいと思います。

 今回は肝炎についてです。肝臓はさまざまな機能を持っていますが、その中でもタンパク質の一種であるアルブミンを合成しているのも肝臓です。肝臓が炎症を起こすと、アルブミンの合成が減少し、血液中のアルブミンも減少します。血液中のアルブミンが少なくなりますので、間質から血管への水の移動が乏しくなり、間質に水がたまった状態である浮腫になるのです。

 この肝炎ですが、農家さんを困らせる疾病の1つでもあります。特に食餌性の肝炎は肥育期に問題となります。肥育期では牛を太らせる必要がありますが、そのためには濃厚飼料が重要となります。しかし、濃厚飼料を多給することで第一胃内の細菌叢が変化し、グラム陰性菌が増殖して大量のエンドトキシンと呼ばれる毒素を産生します。この毒素が血中に入り込んで肝臓に到達し、肝炎を引き起こします。そのため、第一胃内での異常発酵であるルーメンアシドーシスが起こった場合は、肝臓のケアも同時に行うと良いでしょう。肝臓は沈黙の臓器と言われているだけあって、炎症が起こっていても症状があらわれにくく、血液検査の数値も異常を示さないことがありますので注意が必要です。

 肝炎の話で終わってしまいましたが、もう少し続きます。

 
 
 
 
今週の動画
[採血] 採血っていつするの?

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