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加地永理奈のコラム
副作用の弱い薬に

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2023年7月5日

解熱や痛み止めを目的に、ジクロフェナクナトリウムというカプセル状の薬を飲ませることがあります。それを最近、より副作用の弱いセレコキシブという錠剤に変更しました。

まずジクロフェナクナトリウム(主な商品名:ボルタレン)とは、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)という種類の薬です。発熱や炎症などを引きおこす原因となる体内物質プロスタグランジンを抑え、炎症や痛みを鎮め、熱を下げる効果があります。
ウシに経口投与しても、約1時間半で体に吸収され、20時間程効果が持続することがわかっている薬です。経口投与なので、注射の針による損傷のリスクもありません。
ただし副作用として、プロスタグランジンを抑えるのと同様の機序で消化管粘膜の保護も阻害してしまいます。そのため、胃粘膜保護効果のあるセトラキサート塩酸塩(主な商品名:ノイエル)も同時に給与します。

そこで最近、消化管への副作用の懸念がかなり少ないとされるセレコキシブ(主な商品名:セレコックス)を使うようにしました。この薬はCOX2選択的阻害薬とも呼ばれます。
プロスタグランジンは体内でCOXという酵素などの働きによって作られますが、このCOXを抑えるのがNSAIDsの機序です。
胃粘膜保護などに関わるCOX1と発熱や炎症などを引きおこすCOX2の両方があり、COX1に対する作用が少ないことが、副作用が抑えられる理由です。
薬には必ず副作用というものがあります。望ましくない症状が出ないように、正しい薬の用法用量で気を付けていきましょう。

 
 
 
 
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