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蓮沼浩のコラム
第736話:減量の勧め???

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2023年7月4日

和牛繁殖農家さんの元気がありません。往診に回っても、皆さんテンションが低いです。

なぜこのような状態なのか??

答えは主にこの二点になります。

「子牛価格の低迷および飼料価格の高騰」

ざっくりと子牛価格のデータをみてみますと以下のグラフのようになります。

このデータは独立行政法人農畜産業振興機構の子牛取引状況表のデータを利用させていただいています。

2022年の全体の平均は641673円であり、2021年の744926円よりも103253円安くなっています。2023年5月の平均価格を調べると588654円です。2021年の平均と比べて156272円値段が下がっています。約14%の値下がりです。

配合飼料価格は全畜種の加重平均価格を調べてみると、2020年9月はトン当たり65638円だったものが、2023年2月にはトン当たり100222円になっています。35%程度値上がりしています。

粗飼料は2022年のデータですが、平均価格がトン当たり59000円と前年比で43%アップしています。今年は少し価格が下がっているとのことですが、円安傾向が続いていることから予断を許しません。

もちろん様々な配合飼料などの価格安定基金などがあるので単純に比較はできません。
しかし・・・

子牛価格が14%下がり、配合飼料は35%値上げ、粗飼料は43%値上げ。おまけに電気代なども値上げ。

生半可な対応ではとてもじゃないけどコストを下げることはできません。
ただ、いつも牧場を見ている獣医師として繁殖母牛に対しては二つ提案があります。

その1 自給粗飼料を確保
その2 配合飼料の給与量の見直し

その1に関してはそのままです。出来る範囲で粗飼料を作ってみてください。
その2に関しては、ちょっと説明が必要です。

実は繁殖農家さんの中には意外と何も考えずに配合飼料を給餌している方がいらっしゃいます。「とにかく毎日配合飼料を2kgずっと給与」などなど。
今こそ、飼料計算やボディ・コンディションスコアをみて繁殖ステージごとに配合飼料の給与量を調節してみてはどうでしょうか?配合飼料を変更すると様々なリスクが出てくると思うので、まずは現在使っている配合飼料の量を調節してみるのが良いと思います。小生の感覚としては、自給粗飼料と組み合わせることで10~20%程度であれば全体量を削減できるのではないでしょうか。

実はすでに往診先の農家さんの数戸で配合飼料の減量にとりくんでいます。繁殖障害が多発したり、虚弱子牛が生まれたりすれば本末転倒。細心の注意が必要です。まずは比較的安定している受胎~分娩予定日2ヶ月前程度までにちょっと取り組んでみるのがよいと思います。しかし・・・とにかくエネルギーバランスが低くなりすぎると様々な障害がでてくるのでしつこいですが、獣医さんや技術員さんなどと牛を見ながら慎重に取り組んでくださいね。

かなりのハイレベルな管理が求められる飼養管理であることは間違いありませんが、これを機にボディ・コンディションスコアの見方や飼料計算をマスターしてみてはいかがでしょう?

神よ、変えることのできないものを静穏に受け入れる力をお与えください。
変えることができるものを変える勇気を、そして変えられないものと変えることができるものを区別する賢さを与えてください。

ラインホルド・ニーバー

God, give us grace to accept with serenity the things that cannot be changed, Courage to change the things which should be changed, and the Wisdom to distinguish the one from the other.

Reinhold Niebuhr

小生未熟者なるがゆえに、何かの時はいつも一人静かにニーバーの祈りを口ずさんでいます。
 
 
 
 
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