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蓮沼浩のコラム
第735話:強力なアジェンダ?

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2023年6月27日

先日日本の牛さんの頭数のデータを独立行政法人家畜改良センターのデータを使わせていただき自分なりに調べてみました。前回のコラムでは主に和牛について調べたのですが、そのほかの牛の頭数も興味があるところを調べてみました。

まずはホルスタインの雄(去勢)の頭数です。いわゆるホル雄は雌雄判別精液の普及と和牛受精卵の利用の拡大に伴いかなり減ってきているといわれています。小生の診療地区でもホルスタイン去勢肥育を行っている農場は1戸しかありません。コンサル先の農場でも子牛を確保することが非常に難しいことから肥育は行っていますが頭数はかなり減っています。では実際にグラフを見てみますと・・・

想定内ではありましたが、激減しています。平成19年3月には44万頭いたものが、令和5年には約22万頭なり。半分に減っています。昨対比で平均して4%減少しています。そりゃ周りからどんどんいなくなるのもよくわかります。

では搾乳牛である、ホルスタインの雌の頭数はどうでしょうか。

すごく特徴的な頭数の動きですね。平成19年3月から頭数が毎年減っていきます。そして平成29年3月に133万7千頭になります。毎年平均して1.6%ずつ頭数が減っていました。しかし平成29年3月には減少に歯止めがかかります。令和4年3月まで平均して0.5%ですが頭数が増加していますが・・・令和5年3月には再度頭数が昨対比で2.4%減っています。飼料高騰など酪農業界の厳しい話が沢山耳に入ってきます。間違いなく影響がでていると思います。

そんな中、小生はF1などの他のデータをみたり、今までのデータを整理したりしながらふと思いました。

家畜改良増殖目標は「強力なアジェンダ」である・・・

頭数の推移を見ていると、短期的には様々な要因があり、少し変動したりして流れがわかりにくいです。しかし、数年単位の長期的な視野でみると目標数値に向かって着実に数値が動いているのがわかります。

ここに国家の意図が垣間見られます。当たり前のことかもしれませんが、国は間違いなく目標に向かって進めようとしている。そして実際に進んでいる。

前回のコラムで和牛の頭数について紹介しました。小生は令和12年の目標数値をみて、ひっくり返りました。いくら何でも増やしすぎだろ?

しかし、今は違います。

短いスパンで見れば様々な要因で頭数の変動はあると思いますが、必ず和牛は増頭に向かって今後も進んでいくと確信しています。和牛だけが突出して目標数値が高いことから、国家の強い意志を感じます。飼料価格高騰、子牛・枝肉価格の低迷、後継者不足などなど世の中にろくな話はありません。そして増頭することが良い事かもわかりませんが、田舎鼻糞獣医師の小生は世の中の動きに翻弄されながら肉用牛の獣医師として出来ることを粛々とやりたいと思います。

 
 
 
 
今週の動画
bull’s semen collection 種雄牛の採精

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