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戸田克樹のコラム
第396話「獣医師待ちの間にできること⑤」

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2023年6月26日

確認しておいてほしいことその6「胎位のバイタル」
分娩の介助に入る前に絶対に確認しておかなければいけない項目がこのバイタルチェックです。子牛の蹄間部や舌をギュッとつまむことで確認ができます(写真①、②参照)。正常であれば嫌がって足や舌を引っ込めるため、この反応があるかないか、またその反応が強いか弱いかで子牛が生きているのかどうか、あるいは弱っていないかどうかを確認します。時にはすでに子宮内で死亡してしまっていることもあります。反応が強ければ落ち着いてひとつひとつの作業を行ってもある程度は問題ないですし、反応が弱ければ少し時間を意識して作業を早めに進めていかなければいけません。また、蘇生術(人工呼吸器の用意など)の準備も必要になるでしょう。残念ながらすでに死亡していた場合は、子牛が動かないため胎位の整復が難しくなるケースがあります。お産の介助を落ち着いてやっていいのか、少し焦った方がいいのかを見極めるために、バイタルチェックは欠かせません。

確認しておいてほしいことその7「母体の保定と滑車の状態」
子牛の牽引を始めたときに、「子牛を引っ張っていたら母牛の保定が外れてしまった!」という経験はありませんか?恥ずかしながら私は1例あります!!(恥)。分娩の介助に夢中になると、母牛のことまで頭が回らなくなってしまうことがあります。牽引の前に、改めて母牛のつなぎ方に問題がないかを見てみてください。ちなみに、母牛が立った状態で牽引を行うときは、途中で座りこんでしまっても大丈夫なように少し低い位置で保定することをお勧めします。また、滑車を使用する場合は絡まっていないかも事前に確認しておきましょう。いざ、ひっぱり始めたらロープが絡まって全然引けない!という状態になってしまったケースも経験があります…。農家さんには手間をかけてしまいますが、電話で話を聞いたときに難産の雰囲気が感じられたら事前に滑車をセッティングしてもらうことが多いです。使わずに出せるケースもあるので、「せっかくセッティングしたのに~」と言われることもありますが、必要になったときに焦って用意するより、待ち時間の間に落ち着いて作業してもらった方が安心ですね。

使用前に絡みがないかを確認しておきましょう。

つづく

 
 
 
 
今週の動画
bull’s semen collection 種雄牛の採精

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