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藤﨑ひな子のコラム
浮腫⑥~炎症編②~

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2023年6月16日

 天気予報があてにならないほど、梅雨の影響が凄まじいです。いつ雨が降ってもよいように最近は診療車にカッパをつみ始めました。皆様、お身体冷やさぬようご自愛ください。

 前回のコラムでは炎症によって浮腫が引き起こされるメカニズムをお話ししました。今回のコラムでは、少し浮腫の話からずれるところもありますが、身近に潜む炎症についてお話ししたいと思います。

 炎症とは前回もお話しした通り細胞や組織のダメージに対する防御反応や修復反応のことをさします。肺炎、腸炎、筋炎という風に各臓器や筋肉で炎症は起こります。細菌やウイルスといった感染因子などが細胞にダメージを与えると、ダメージを与えられた細胞や肥満細胞といった特殊な細胞が、周囲の細胞や血管にダメージを受けたことを伝えたり、白血球を活性化させたりする物質を放出します。この物質をケミカルメディエーターといいます。ケミカルメディエーターは様々な種類があります。細胞がダメージを受けると、血管内に流れている白血球が血管から出て、ダメージを受けた細胞の周りに集まります。細胞の周りに集まった白血球はケミカルメディエーターや病原菌の因子などによって活性化されます。活性化された白血球は、細菌やダメージを受けた細胞を食べたり(貪食作用)、病原菌を攻撃する酵素(リソソーム酵素)を放出したりすることによって、炎症物質やダメージを受けた細胞を体内から処理します。これが炎症反応の一連となります。
 
 アレルギーも炎症反応の1つです。最近でも、ペニシリンショックで顔を中心に浮腫を全身に引き起こした牛がいました。眼も腫れぼったくなり、全く開くことができていません。診療した笹崎獣医師曰く、「首の皮膚も全体的に腫脹していて、頸静脈を特定することが難しく、留置針の挿入が難しかった」とのことでした。人でもスギ花粉アレルギーによって、くしゃみをしたり、目が充血したりしますよね。あれも炎症反応なのです。


ペニシリンショック

 次回は浮腫の話に戻ろうと思います。

 
 
 
 
今週の動画
【聴診】聴診の様子

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