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藤﨑ひな子のコラム
浮腫⑤~炎症編①~

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2023年6月9日

 6月のはじめですが、また台風が発生していますね。今年の梅雨は降水量も多いとのことなので、皆さま安全にお過ごしください。

前回までは血液の滞留によって血管内の水分が間質に通常より多く移動し、浮腫になるということについてお話ししました。今回のコラムでは、炎症によって血管内の水分が間質に移動し、浮腫になることについてお話ししたいと思います。
 
 そもそも炎症とは、傷つける物質(傷害因子)や細胞のダメージ(細胞障害)に対して、防御したり修復しようとしたりする反応のことを言います。細胞にダメージが与えられると、血管が拡張し血流量が増化します。血流量が増加しますので、血管から間質に水分が通常より多く移動します。この時点で浮腫は起こっていますね。同時期に、細胞がダメージを受けたことを他の細胞に伝える物質(ケミカルメディエーター)が出てくるのですが、それが血管の細胞(血管内皮細胞)に反応します。反応した血管の細胞は1つ1つ反応し、それぞれが縮みます。それぞれの細胞が縮んでしまうため、血管に隙間ができるのです。この隙間から血管内の水分はもちろんのこと、血管内の一部のタンパク質が間質へ移動して、浮腫が起こるのです。

 さきほど一部のタンパク質が間質へ移動するとお話ししましたが、この中でもアルブミンというタンパク質が血管内外の水の移動に関与しています。通常、アルブミンは血管内に多く存在しており、血管内でアルブミンが濃い状態となっています。体の中において、水は薄い方から濃い方に移動します。ですから、通常時は間質から血管内へ水が移動しているのです。しかし炎症により間質にアルブミンが漏れ出てしまうと、血管内のアルブミンの濃度は通常時より薄くなり、間質から血管内への水の移動が乏しくなります。また反対に、間質の方が濃くなると、血管から間質へ水が移動してしまいます。このようなメカニズムでも浮腫が起こるのです。

 
 
 
 
今週の動画
BoviLab use 4 (現場でBovilLabを使ってみよう その4)

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