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藤﨑ひな子のコラム
浮腫④~血液滞留編③~

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2023年6月2日

 梅雨入りして毎日ジメジメしますね。何もしなくてもべたべたします。今年の梅雨は雨の日が多そうです。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 前回のコラムでは、浮腫の要因となる血液の滞留を引き起こす病態には、心機能の低下と腎機能の低下があることをお話ししました。今回も引き続き血液の滞留を引き起こす病態についてお話しします。

 まずは静脈血栓です。静脈血栓とは、心臓に返ってくる血液の通り道である静脈に、血液のかたまりである血栓ができる状態のことをさします。静脈内に血栓ができることによって、血液の流れが悪くなり、血管内の水分が間質へと移動し、浮腫を引き起こすのです。血栓は血管内皮細胞の障害、血流速度の低下、血液性状の変化によって形成されます。血管内皮細胞の障害はウイルスや細菌、寄生虫などによる感染やビタミンE不足等によって引き起こされます。血流速度の低下は前回のコラムでお話しした心機能の低下や、慢性的な下痢などによって引き起こされます。血液性状の変化は腎機能低下によって毒素が排泄されず尿毒症になることで引き起こされたり、肝臓の疾患などによって引き起こされたりします。

 最後に病態ではないのですが、妊娠によって血液の滞留が引き起こされます。妊娠し胎児が成長すると、胎子によっておなかの中の臓器が圧迫されます。このとき臓器だけではなく血管も圧迫されてしまいますので、血液の通りが悪くなり浮腫を引き起こしてしまうのです。以前、分娩介助した際に産道がむくんでいる牛がいました。足だけではなく、他のところにも浮腫が生じるのだなと実感しました。

 3回にわたって血液滞留によって浮腫が引き起こされるメカニズムや病態についてお話してきました。次回は違うメカニズムによって血管から間質に水が移動し、浮腫が引き起こされることについてお話しします。
 
 
 
 
今週の動画
肥育牛で「股裂き」がありました

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