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笹崎直哉のコラム
直針と翼状針について考えてみる 後編

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2023年6月15日

先日鹿児島県家畜臨床研究会に参加してきました。かなりご無沙汰していて、約7年ぶりの参加でした。初めてお会いする先生はもちろんのこと、7年経っても変わらず活気に溢れ活躍されているベテランの先生にも再会でき、刺激的な2日間でした。今回はリモートと対面のハイブリッド形式で開催されました。1頭1頭の症例に対し、これがいいのでは?もっとこうしたほうがいいかもね、などと多様なコメントが飛び交う本研究会の雰囲気が個人的にとても好きです。今後もたくさんの先生、関係者さんが集まり、盛り上がるような会になって欲しいと願うばかりです。

さて前回は直針と翼状針を比較し、人間の医療では採血成功率や患者不快度、神経損傷の観点から評価すると翼状針の方が優れていることが分かりました。
一方でコスト面を考えると、やはり翼状針の方が高価なためいつでもどこでも翼状針を選択するわけにはいかないようです。

では産業動物、特に牛さんの診療で翼状針が使われる場面はあるのでしょうか。結論から申し上げますと「No」です。牛さんの血管注射、点滴、採血などの場面を思い浮かべてみてください。人間をはるかに超える皮膚の分厚さ、頸静脈のような太い血管にアプローチするため、ある程度の長さ、太さをもつ直針の方が操作しやすいのは当然です。ただ「成牛はまだしも子牛に対してはどうなのか」という疑問と「実際に翼状針で血管注射したらどうなるか」という興味本位で、先日現場で使ってみました。
ちょうど貧血症例に対し、輸血を実施するケースがあったので、留置針の代わりに翼状針を使ってみました。

私個人の感想としては血管確保まではやり易かったです。緑色の羽の部分も外れないように接着剤を付けてピタッと皮膚に付けることができました。案外いいかもと思った矢先、「むむ、でも牛さんがバタバタ動いたら簡単に外れて血管外に漏れてしまいそう」という不安に駆られました。
結局のところ「やっぱり留置針で血管確保したほうがいいなぁ」という結論にいたりました。
ただ翼状針は静脈内注射などのいわゆる血管注射で使われなくても、卵胞嚢腫の治療の一環で卵胞液の吸引をする際に使用されたり、膿瘍や挫傷などの腫瘤部位に対する試験的穿刺、吸引で使ったことが過去にあります。

また局所注射(この場合は皮下注射がほとんどですが)などをするときなんかは翼状針を重宝しています。
他に「翼状針はこんなシーンで使うよ」など、アイデアをお持ちの先生がいらっしゃいましたら、是非お聞かせください!!

 
 
 
 
今週の動画
【聴診】聴診の様子

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