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松本大策のコラム
「シコリが出たらどうする?(その4)」

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2007年12月18日


 前回お話ししたように、シコリの原因自体がサシを求めて改良され続けたためによる脂肪の異常増殖だとしたら、有効な対策は見あたりません。要するに、サシの入り過ぎっていうものですからね。
 しかし、筋肉の変性萎縮が先で、その隙間を埋めるために脂肪が増殖したのだと考えると、筋肉の変性萎縮の原因を考え、対策を打つことが出来ます。
 肥育牛で筋肉の変性というと、真っ先に思い浮かぶのが筋肉水腫、いわゆるズルです。しかしながらこちらは炎症反応の一種なので、ズルを起こした筋肉では繊維細胞が増殖して結合組織というものに置き換わって、後にスジのように硬くなる、いわゆる筋肉系のシコリになります。このようなタイプのシコリもズル多発農場では時折見られます。
 それでは、脂肪置換型のシコリを起こす筋肉変性の原因として、いったいどのようなものが考えられるのでしょうか?顕微鏡写真を見ると、横紋の消失や色が濃く染まる(濃染性といいます)現象が起こっており、また時折空洞化した筋肉繊維が見つかるなど、人間のビタミンE欠乏症の際に起こる「異栄養性ミオパチー」という病気に似ています。
 僕は脂肪弛緩型のシコリの出る農場では、とりあえず20ヶ月齢以降の牛さんすべてに、ビタミンEとパントテン酸カルシウムを与えるようにお勧めしています。注射ならそれぞれ10mlずつ1回皮下注射します。添加剤なら、メイロング20gとパンカルG散100gを5日〜10日間飼料添加します。前期のβカロチンの少ない農場では、この時期にルーサンペレット100g×10日間程度与えます。最近ではビタミンEの吸収性のよいモラフィットSPを使用する場合もあります。このときは1頭50gで10日間程度与えます。
 本当に現場でなんとかシコリを止めたいという、あがきにも似た対策ですが、これでシコリが減る農場も多いのです。ただ、ビタミンEが不足する要因の1つとして、「持続的な刺激」による活性酸素の増加があります。簡単にいうと餌を食うたびに馬栓棒などで肩の辺りが圧迫されるような、つまり馬栓棒の低すぎる農場では、カブリのシコリは起こりやすい可能性があるのです。
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