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笹崎直哉のコラム
急に増えた子牛の下痢をあなたはどう捉えますか ~前編~

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2023年5月23日

先日、早朝の難産対応を終えた藤﨑獣医師が事務所で新人の橋本獣医師に当時の難産の状況、対応方法について熱弁していました。その姿は格好良く、8年目に突入する笹崎は「いいね~臨床獣医師として立派になったな~」と勝手に近所の仲の良いおじさんになったような感覚になり、2人の話の一部始終を聞いていました。ともかく夜間の難産対応お疲れ様でした。

今回は哺乳期子牛の下痢についてお話しようと思います。人工哺乳を行っている農家さんで「下痢する子牛が急に増えた」という稟告をもらうことがごくまれにあります。先日ちょうど同稟告を受けたのですが、どのように下痢の改善に向けアプローチしたのかをこの場を借りて紹介しますね。
人工哺乳の農家さんで「急に下痢が増えた」という稟告に対し私は大まかにその原因が三つあると捉え診察するようにしています。その三つは①感染性②環境性②代用乳の管理失宜です。これらの選択肢を一つ一つ潰していくと下痢の原因がある程度分かり、治療の方向性が定まると個人的に考えています。治療による便性状の改善がなかなか認められないとき、私はこの3軸を中心に考えるように普段から心がけています。

今回のケースは10日齢~2ヵ月齢の下痢でした。黄白色でやや酸臭のある流泥状下痢が散発していましたが、脱水はなく、活力や飲乳欲に関しては全く問題ありませんでした。
私はまず感染性の下痢の可能性を考え糞便検査を実施しました。ターゲットは寄生虫、ウイルス、細菌です。実際に検査してみると糞便中のコクシジウムの虫卵は陰性、さらにロタ、コロナウイルス、クリプトスポリジウム、大腸菌も検査キットで試しましたが検出されませんでした。
この時点で「何らかの強い病原体に感染して下痢したわけではなさそう」と判断し、次なる環境要因を探りました。ハッチの敷料は充分で衛生的だったのと、寒暖差はさほど目立たず、悪天候でもなかったので、子牛がお腹を冷やして下痢をしたようには思えませんでした。そこで最後、代用乳の管理失宜の有無を確認しました。哺乳バケツやボトル、乳首が衛生的であることを前提として重要視しているのが、「代用乳を飲ませる直前の温度」、「代用乳の増量スピード」、「希釈倍率」です。どれも管理を怠ると何頭も下痢させてしまう可能性があります。特にF1(交雑種)やホルスタイン種と比較すると黒毛和種では如実に表れるところではないかと個人的に考えています。

つづく

 
 
 
 
今週の動画
【深部】深部触診をやってみた

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