(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
笹崎直哉のコラム
牛体吊起について考えてみる その9

コラム一覧に戻る

2023年4月27日

先日、診療でご年配の肥育農家さんを伺いました。投薬が済んで帰るとき、給餌時間についてのお話をしてくださいました。『この前なぁ、たまたま夕方の給餌がいつもより遅くなってなぁ、不思議なもので、もう餌をもらえないと思って諦めたのか、配合飼料をやっても暫く餌箱に牛が寄ってこなくてなぁ、座ってたんだよなぁ、やっぱりいつも通りの時間に餌をやらんとなぁ』とのこと。各農場で給餌回数や時間帯は異なりますが、『定刻に給餌する』ことは非常に重要だと改めて感じました。

では前回の続きです。今回は生後間もない牛さんの話をさせて下さい。繁殖農家さんであれば『分娩予定日よりも1ヶ月程度早く、体重が20kg弱の虚弱子牛が産まれた』というケースが過去にあると思います。生後すぐ自力起立ができれば良いのですが、中には骨、関節、筋組織の発達が弱く数日間自力で立てない牛さんも出てきます。このような場合、起立を促すことで経過が良くなるケースがあります。子牛であれば体重が軽いのでカウハンガーなどの道具を使って吊起する必要はなく、シンプルに人力で腰を持ち上げて介助起立を促してあげることができます。これを1日に数回してあげるだけで、血液循環の改善が期待でき、とても効果があると個人的に思っています。ちなみに私のお勧めは

① まずは腰をゆっくり持ち上げて後ろ足の蹄を正しい位置に負重させる
② 今度は胸を持ち上げて、前足を伸ばし、蹄を正しい位置に誘導する
③ しっかりと四肢が負重するようになったら支えていた手を離す
④ もし倒れなかったら、積極的に歩かせてあげる 

このルーティンを1日の中で数回実施してあげることです。
あとは栄養管理に注力します。虚弱体質の牛さんは内臓機能も充分ではありません。まずは下痢をさせないようなミルク管理が必要です。初乳であれば通常よりも長い期間の給与、且つ1回量を少なく、何回かに分けて飲ませてあげることをお勧めします。例えば初乳製剤であれば、1回に1袋そのまま使わず半分量を使い、残りの半量はまた数時間後に与えるなどの工夫をしてあげると良いです。最近は治療中の虚弱子牛で生後4日目にしてやっと自力起立できた子がいました。

このときはとても嬉しかったですね。

 
 
 
 
今週の動画
BoviLab use 4 (現場でBoviLabを使ってみよう その4)

|