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加地永理奈のコラム
耳片検査

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2023年4月5日

診察のために子牛を観察していると、耳のところに小さなまるい傷があることに気がつきました。これは虫刺されか?と思って見ていると、農場スタッフさんが検査のために耳片をとった痕だと教えてくださいました。

専用の器具を使って耳をバチッと挟むと、耳の皮膚の一部がチューブの中に採取されるので、これを専門機関に送り検査してもらいます。この農場でお願いしていた検査は、届出伝染病である牛ウイルス性下痢(BVD)の感染がないかを調べるための検査でした。
BVDウイルスの感染があると、流産死産があったり、生まれた牛が発育不良、免疫抑制を起こして慢性的な下痢や呼吸器症状があったりと、生産性が著しく低下します。
妊娠牛にこのBVDウイルスが感染すると、その胎子にも胎盤を介して感染します。BVDウイルスに感染して生まれた子牛は生涯にわたってそのウイルスをばら撒き続ける持続感染牛(PI牛)となります。持続感染牛が農場にいると、同居牛にも広がりますし、その牛から生まれた子牛も持続感染牛となって、みるみるうちに蔓延してしまいます。
BVDウイルスの清浄化には、ワクチン接種も重要ですが、感染源となる持続感染牛は治療法がないため早期発見が欠かせません。持続感染牛を後継牛として農場に残さないように、他の農場に感染源として持ち込まないように、なるべく簡便な検査方法でできるだけ多くの牛のスクリーニング検査をおこなうことが理想です。採血技術がいらず、糞便等の混入もしにくくて再採取のリスクが少ない耳片検査は一役買ってくれているのではないでしょうか。
耳片からはその牛の遺伝子情報も調べられるため、耳片検査はゲノミック検査にも使われます。
 
 
 
 
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