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加地永理奈のコラム
遠隔診療が保険対象に②

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2023年3月29日

前回の続きです。

遠隔診療を行うには、通信環境と通信機器が整っていること、農場に薬品や器材があること、注射や点滴などの処置ができる農場スタッフさんがいることが前提として必要です。
さらに、獣医師とその農場の関係が普段から定期的に訪問しているところである必要もあります。
普段から往診に行っている農家さんの方が、その牛が育ってきた周りの環境や食べているエサだったりも把握できていますし、農場によって流行りやすい病気、効きやすい薬もあったりします。
農場のスタッフさんと獣医師の間の連携も密であると、このスタッフさんがこの処置を担当できるというのを双方で把握でき、処置をお願いしやすくなります。さらにその使う薬の効能ということまで共通認識があった上で行うと、うっかり薬の打ち間違いも防げるのかなと思います。

つまり、遠隔診療を便利に利用するためには、その環境を整えるために時間をかけた丁寧な事前準備が必要になってきます。注意して観察してほしいポイント、農場に置いてもらう薬の用法用量、などを獣医師から丁寧にお伝えし、注射方法や直腸検査といった技術も一緒にやって覚えていただく場合が出てきます。それをいつでも確認できるような図表を作って現場に置いておきたいところですね。

遠隔診療が推進され始め、保険適用になり、今後は農場で行う診療と遠隔診療それぞれの向き不向きが明確になってくると思います。獣医師が一日の3割程費やしている移動時間が診療時間に充てられるようになると、診察できる牛の数が増えます。血液や糞便の検体は、今は獣医師が農場で採取して持ち帰るのが普通ですが、農家さんにとって送ってもらうことが主流になるかもしれません。しかし、呼吸の仕方、糞便の色形、歩き方といった視覚の情報は共有しやすくても、匂いや触感について動画や言葉で共有することは難しいですよね。
まずは、「初診」は現場で診察して、治療後に元気になったか確認のための「再診」は遠隔診療という形から浸透していくと良いなと思います。農家さんの不安が解消されるように、現場診療と遠隔診療の両方を上手く活用していきたいです。

 
 
 
 
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【診察】聴診器をつかって何を知る?

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