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戸田克樹のコラム
第386話「どんなときに検査するの?~直腸検査編その2~」

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2023年3月30日

サクラも咲いてすっかり春らしくなった地域も多いことと思います。気づけば3月ももう終わりそうです。3月が始まったのがつい昨日のことのようで衝撃を受けています。
それでは、前回に引き続き直腸検査でわかることをつらつらと書いてまいります。

分かることその③子宮の状態
分娩後の子宮回復が順調かどうかを探ることもできます。産後からある程度日数が経過しているにも関わらず子宮が膨満したままであれば回復が遅れています。子宮が膨満しているだけでなく、波動感があれば至急蓄膿症を起こしているかもしれません。子宮が硬い感じがあれば子宮内膜炎を起こしているかもしれません。分娩して間もないうちは子宮がまだ大きく、悪露も出ているのは普通のことなので心配いりませんが、分娩日から1ヶ月以上が経過しても子宮が大きかったり悪露が出続けたりするのは問題があります。牧場内でフレッシュチェック日(分娩後に順調に生殖器が回復しているかどうかを確認する日。子宮、膣、卵巣の状態をチェックします。)を設けるのもいいですね。だいたい産後30~40日程度で行う牧場が多いです。

分かることその④腹腔内リンパ節の確認
子宮の周りや直腸の周囲には複数のリンパ節があります。もし、BL(牛伝染性リンパ腫)を発症してしまったら、リンパ球が異常に増殖し続けるため体表リンパ節や腹腔内リンパ節が大きくなってきます。特に経産牛で熱や下痢がないにも関わらず、元気がなかったり、食欲が落ちていたりする場合はBL発症の可能性も視野に入れて直腸検査を行う必要が出てきます。

直腸検査を行った方がいいかもと思うときは、「持続挙尾」や「努責」といった様子が見られた場合です。脂肪壊死症では排便障害が起こりますので、便がでないのにずっと力んでいることがあります。腸管の動きがおかしくなるため激しい水下痢をすることもありますから、そうした下痢が見られたときもチェックしますね。また、同じように尿石症の場合でも尿道に石が詰まっていると尿をなんとか出そうとして力みますので、同じような持続挙尾や努責が見られます(尿毒症に移行すると尿毒便といって特徴的な下痢が見られることもあります)。

このほかにも、分娩後に産道裂創が起こっている場合も持続挙尾は現れることがあります。分娩後に持続挙尾が見られたら膣検査を併せて実施するのもよいかもしれません。

直腸から手を入れる、という行為ひとつでさまざまな診断をつける、あるいは除外することができます。特に道具もいらない手軽さもあり、つねにポケットに直腸手袋を入れている私は診察中にちょっとでも気になったらすぐにやってしまいます。
 
 
 
 
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