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藤﨑ひな子のコラム
お産トラブル時の薬~プラニパート編②~

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2023年3月10日

 会社の健康診断に昨日行ってきました。いつも採血する側なので、採血されるときにどのような手技か気になり、初めてまじまじと採血される瞬間を観察しました。担当の看護師さんは丁寧で痛みもほとんどなく、素早かったです。見習わなければなと思いました。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 前回のコラムでは正常な胎位は2種類だけで、その他の胎位は失位と考えられ、整復するときにプラニパートを使用することをお話ししました。今回は前回に引き続き、プラニパートについてお話ししたいと思います。

 プラニパートの主成分は塩酸クレンブテロールです。クレンブテロールは子宮平滑筋を選択的に弛緩させるβ2アドレナリン作動薬です。β2アドレナリン作動薬が結合するβ2アドレナリン受容体は血管や気管支平滑筋など様々な組織に分布しており、主に抑制効果を示します。骨格筋の動脈では拡張し、気管支平滑筋では弛緩させます。そのためヒトにおいては、気管支拡張剤として用いられることがあります。プラニパートは子宮平滑筋を選択的に弛緩させることで、胎子の失位整復や帝王切開で補助的役割を果たします。
 
 帝王切開とは経膣分娩が難しい場合や胎子の牽引が困難な場合に、母牛の開腹を行い、子宮を切開して胎児を娩出させる方法です。分娩中は怒責(出産時のいきみ)により子宮が収縮します。子宮が収縮していると、子宮の上から胎児を保持することが難しく、手術が困難となります。また、胎子が出てきた後に子宮が急速に収縮すると、子宮の縫合が困難になります。これらの困難を解決するために帝王切開前にプラニパートを投与します。プラニパートが投与されると、子宮が弛緩し、帝王切開において子宮の操作が容易となるのです。

 また子宮捻転時もプラニパートは有効です。子宮捻転とは子宮が右もしくは左に回転した状態です。子宮捻転の整復には胎児を回転させる胎子回転法や母牛を回転させる母体回転法があるのですが、整復前にプラニパートを投与することで、子宮が弛緩し、子宮の整復を手助けしてくれます。

 シェパードではこのようにプラニパートやホーリンを使用して難産介助を行っています。

 
 
 
 
今週の動画
Supraspinous burstitis キ甲腫

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