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藤﨑ひな子のコラム
お産トラブル時の薬~プラニパート編①~

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2023年3月3日

 桜も各地で咲き始め、いつのまにか3月を迎えもう春ですね。皆様はいかがお過ごしでしょうか。

 今回は前回に引き続き、お産のトラブルの時に使用する薬についてお話ししたいと思います。前回は頸管拡張不全の時に使用するホーリンについてお話ししました。今回は胎子の失位整復や帝王切開前に投与するプラニパートについてお話ししたいと思います。

 その前に胎子の失位についてお話しします。失位とは胎子の母体内に対する位置が正常ではない状態をいいます。胎子の母体に対する位置関係を胎位と胎向で表し、胎子の頭や足の位置関係を胎勢で表します。胎位とは母牛の骨盤腔に最も近い胎児の部分(頭位、尾位、腹位、背位、殿位)のことをさし、胎向とは胎子の背骨が子宮のどの面(上胎向、下胎向、側胎向)に接しているかをさします。胎勢は胎子の頭、前肢、後肢の位置関係をいいます。

 正常な胎位は前肢を伸ばして頭から出て(頭位)胎子の背と母体の背が同じ向き(上胎向)である頭位上胎向、もしくは後肢を伸ばして(尾位)胎子の背と母体の背が同じ向き(上胎向)である尾位上胎向の2つです。頭位上胎向や尾位上胎向でも首を曲げていたり(側頭位)、後肢が伸びておらずお尻が付きだしていたりする(殿位)場合も失位とみなされます。

 失位のままお産が進むと胎子が無理な姿勢であるため、なかなか娩出されず胎子の命が危険にさらされます。そのため失位を確認したら、産道の途中まで胎子が出てきていても、一度子宮に押し戻し、失位整復を行い正常胎位にした後に娩出させます。ここでプラニパートを使用すると、子宮平滑筋がゆるみ子宮のスペースが広くなることで、失位整復がやりやすくなります。
 次回も引き続きプラニパートについてお話しします。


失位


正常位
 
 
 
 
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