2023年3月2日 どちらのケースでも、1つのテーマについて話し合いました。それは、「どこまで治療をがんばるか」ということです。これまでの経験や現在の牛さんの状態を説明し、そのテーマについて農場で話合いを行いました。今回はどちらの畜主からも「3日間頑張ってもダメだったら積極的な治療はやめよう」という回答があったため、その指示を受け、3日間は点滴や鎮痛剤の投与に加え吊起も毎日行い、積極的に処置を続けました。しかし、残念ながらその後も状況に一切の変化はなく、結局のところ治療は中止、という判断になりました。 もちろん、畜主が納得いくまで治療はすべきです。実際に、畜主の要望を受け、起立不能の牛に対して何日も治療を続けたことはあります。今回のケースも最終判断は畜主にゆだね、その決断に従いました。大切なのはゴールを決めておくことです。「ここまでやってダメだったら治療は中止」、もしくは「ここまでやって改善があれば次はここを目指そう」といった小さなゴールをいくつか用意するやり方でもいいと思います。ゴールが決まっていないと、治療を行う獣医も畜主も暗闇をさまよっているような状態に陥ってしまいます。重症な牛を治療するときほど、畜主への状態の説明やゴールの設定(共通認識)が非常に重要である、と改めて考えさせられた診療の一コマでした。 前の記事 第382話「どこまで治療をがんばるか①」 | 次の記事 第384話「どんなときに検査するの?~血液検査編~」 |