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戸田克樹のコラム
第382話「どこまで治療をがんばるか①」

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2023年2月20日

1月の話ですが、「母牛の起立不能」という症例が立て続けに発生したことを、ふと思い出しました。どちらも15歳と高齢で、妊娠はしていませんでした。発情による同居牛の乗駕が原因とみられ、血液検査では筋損傷が起こった際に上昇するCK(クレアチンキナーゼ)の数値が明らかに上昇していました。また、低カルシウム血症、低マグネシウム血症、低コレステロール血症も起こしており、ひどく削痩もしていました。おそらく、群内の順位が低かったなどの理由により採食量が日ごろから十分でなく、長期間栄養不良だったのではないかと推測されました。

どちらのケースも、初診時は起立欲がまったくなく、点滴をしても翌日の様子に変化はありませんでした。2診目から吊起を実施しましたが、本人の立とうとする気力はまったくなく、前肢を伸ばそうともしない状態でした。ただ、吊られているだけの状態です。本人に立つ気力がない(足に力が入らない)状態が続いた場合、その後立てるようになったケースはあまり記憶にありません。治療によって立てるようになったケースでは、発症日から5日目までに起立欲が出てきて、吊られながらも自分の足でまっすぐ立てるようになる(少なくとも足に力が入るようになる)ことがほとんどです。

そこで、治療を行いながら、とあることを畜主と話し合いました。

つづく
 
 
 
 
今週の動画
ナックル子牛 副木固定にチャレンジ

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