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戸田克樹のコラム
第381話「沈下の有無で見分けよう」

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2023年2月6日

関節炎、筋炎、趾間腐爛などで足を痛めたとき、問題のある足とその重症度を見分けるポイントのひとつに「沈下」の有無があります。痛みが非常に強い場合は痛い方の足を地面につけることができず、ずっと浮かせたままにしています。

このような立ち姿であれば、どの足が痛いかはすぐに分かりますね。それよりも痛みが弱い場合は、痛い方の足に体重を乗せる(負重する)のを嫌がるため、痛い方の足が地面についている時間が短くなり、「ひょこひょこ」と歩くような感じになります。

痛そうにしているけど跛行がそこまで強くない場合、どの足が痛いのかを見分けるのが難しくなってきます。そんなときにポイントとなるのが「沈下している足があるかどうか」です。足を痛めるときは右か左か、どちらか一方であることがほとんどです。多少なりとも痛みがあると、痛みがないほうに体重がかかります。それが何日も続いていくと、だんだん球節が地面に近づいてきます。何も知らずに見ると、べたーっと足が曲がっているように見えるので、「こっちの足が悪いのか?」と思ってしまいそうですが、それは「長期間体重(負担)がかかった結果」生じた変化であるため、異常のある足は「その反対側の足」だということになります。

これを知っておくと、悪い方の足に気づきやすくなります。また、短期間では足の沈下は起こらないため、もしどこかの足が沈下していたら、それはかなりの日数が経っていることも示しています。つまり、沈下している足があった場合、跛行の重症度は高く、そう簡単には治らない可能性が高いということを示してもいます。

先天的に筋腱が弱く、いわゆるネコ足のようになっている牛とは区別しなければいけませんが、歩き方がおかしい牛を見つけたら、「どこかの足が沈下していないか」を意識して観察してみることをお勧めします。
 
 
 
 
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