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戸田克樹のコラム
第380話「直腸検査をする理由」

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2023年1月23日

月齢が若い場合は除きますが、肥育牛でも繁殖母牛でも、直腸検査をする機会は多いです。
調子が悪い原因が発熱や肺炎など、明らかに分かっている場合はあまり行いませんが、患畜の調子を悪くしている原因が特定できないときは積極的に行うようにしています。

直腸検査をしてみると、体調の悪い原因がはっきりと分かることがあります。非常に大きな脂肪壊死塊があったり(写真①)、腸粘膜がボロボロで易出血性になっていたり(写真②)、尿石症で膀胱がパンパンに膨れていたり(写真③)、牛伝染性リンパ腫(旧名:牛白血病)の発症によって腹腔内リンパ節が腫大していたり、といったさまざまな異常が直腸検査で分かります。逆に考えると、そうしたことは直腸に手を入れないと分かりません。妊娠鑑定や卵巣所見を確認する際にも直腸検査を行いますが、「分娩予定日を過ぎても生まない」という稟告を受けたときも直腸検査を行います。胎子がどのくらい子宮頸管に近づいてきているか、頸管は開き始めているか、子牛のバイタルは良好か、子牛の大きさはどのくらいか、といった様々な情報を得ることができます。まさかの「妊娠していなかった!(鑑定後に流産していたのにそのまま気づかれなかった)」なんてケースもありますので、確認は非常に重要です。


写真①


写真②


写真③

直腸検査といっても、薄いビニール手袋をつけて直腸に手を入れるだけで行える検査方法です。慣れないうちは何がそこにあるのかまったく分かりませんが、感覚がつかめれば直腸検査で得られる情報は非常に多いです。やらない日はないのでは?というくらい、実施頻度が高い検査のひとつです。
 
 
 
 
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