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戸田克樹のコラム
第379話「やっぱり静脈注射が好きです」

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2023年1月12日

三が日も終わってしまいましたね。牛飼いの皆さんは年末年始も通常業務に追われていたこととは思いますが、少しはゆっくりとする時間をとることができたでしょうか。

さて、冬季に入り、重度の肺炎を治療する機会も増えてきました。とくに育成期の子牛を管理している牛舎で肺炎が流行することが多いです。初診からぐったりして41℃を示す牛や聴診器を当てた瞬間に「うわっ!」と声が出てしまうような肺炎もあります。そういうときは長期治療を覚悟しなければいけませんし、畜主にも長くかかる可能性を伝えた上で治療を開始します。注射には皮下注射、筋肉注射、静脈注射と種類がありますが、長期治療を覚悟した場合は静脈注射を選択します。その理由はずばり、注射痕が発生しにくいからです。注射を毎日投与していると、皮下でも筋肉でもいずれは注射した部位が腫れたり固くなってきたりします。もし筋肉でそのような腫れや硬結が起こってしまうと、瑕疵(シコリ)が生じてしまい、枝肉評価を下げてしまいます。ひどい例ではあまりにも注射を打たれすぎて両肩の広範囲がガチガチに硬くなってしまい、「どこに皮下(もしくは筋)注したらいいの?」と思ってしまうこともあります。

一方、静脈注射はいくつかの薬剤を投与できる、投薬量が多くても注射部付近の組織に影響を与えることが少ない、連日投与しても注射部が腫れるなどの悪影響が少ない、といった良い点があります。まさに、長期治療牛にはもってこいの投薬方法なのです。もし肺炎や慢性下痢などの長期戦が予想される症例に遭遇した場合は、皮下もしくは筋肉注射しかできない薬剤ではなく、静脈注射できる薬剤を選択されることをお勧めします。

 
 
 
 
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