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蓮沼浩のコラム
第721話:残心

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2023年2月21日

小生は獣医療を行う上で、残心(ざんしん)というものを常に意識しています。この残心とはいかなるものか?

非常に定義が難しい内容になります。日本の武道ではこの残心というものが非常に重要視されています。剣道などでは打突した後も相手の反撃に備えておくという心構えのことと言われています。他にもたくさんの定義がなされています。「余韻の美学」などともいわれています。感覚としてはよくわかるのですが、言葉にするのはなかなか難しいですね。

では、小生がどのようにしてこの残心を診療現場でいかしているかといいますと・・・

例えば注射をしたとき。意識を集中して丁寧に針をさし、薬液を注入します。
そして、針を抜くときも気を抜かず、ゆっくりと丁寧に針を抜き(ここは非常に重要なポイントと小生は思っています)、キャップに針をしまいます。この時も日本刀を納刀するような気持で取り組みます。針を刺した場所や牛さんの状態をしっかりと確認しながら注射部位を軽くたたいたり、もんだりします。これらの動作の最後に、余韻を残すように意識しています。

この獣医師は一体全体何を言っているのか?

訳がわからないと思います。本当に自分でもなんだかわからないのですが、とにかく自分の行う診療行為に「美」を求めたいのです。だれが見ても、美しい所作の処置がしたいのです。牛さんに近づく時、牛さんを捕まえて保定する時、直腸検査をする時、薬を飲ませる時、手術をする時などなど。間合い、呼吸、目付、そしてどんな時でも「残心」を意識して取り組むことで、診療技術は必ず向上すると思っています。

いつも忙しくてバタバタしてしまう現場です。理想どおりにはいきません。小生ももちろん修行の身。思ったように処置ができず、大騒ぎになってしまうこともあります。ただ、忙しい時こそ、この残心、そして余韻の美学を意識して診療ができるといいですね。

 
 
 
 
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