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笹崎直哉のコラム
牛体吊起について考えてみる その2

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2023年1月31日

先日熊本県で開催された音楽イベントにお招きいただき、ダンスを披露させていただきました。家族連れのお客様が多いと聞いていたので、子供達に喜んでもらえるような内容に仕上げました。いつも応援に来てくださる方には「今回もいろいろと凝った内容で楽しかった」と喜んでもらえました。

3月にまた大きなお祭りの舞台で踊るので、客層などいろいろ点をチームメイトと分析し、喜んでもえるような内容にしていきたいです。

さて吊起コラムのつづきになります。前回は吊起の目的とその注意点に関して考えられるものを箇条書きにてお伝えしました。
過去の現場経験からすれば、初診時に吊起するのと、第2診察日(再診)に吊起するのとでは目的がやや異なります。
私の経験上、初診時に起立困難、難渋、不能レベルの牛さんに対し吊起をする場合、診断をつけること、症状を把握することを目的にすることが多かったです。

理由は診断をつける上で重要となる血液検査結果が翌日以降でないと分からないためということ、それから体位変換のみでは予後判定含め症状把握が難しいためです。

一方初診時で起立不能牛に対し、必ずしも吊起を選択するわけではありません。患畜の情報収集、視診、体温測定、触診、聴診、直腸検査などの診察ルーティンを粛々と行っていく中で吊起せずとも診断がつくケースもあります。

ここで起立不能牛に対する診察ルーティンの内容で意識していることを紹介します。まずは患畜の情報についてです。肥育牛であれば血中ビタミンAレベルや脂肪壊死症との兼ね合いがあるので、月齢の確認がとても重要です。また肥育雌であれば発情粘液や発情後出血などのチェック、繁殖雌牛であれば年齢はもちろんのこと受胎の有無、不受胎牛であれば最終分娩日と発情周期の確認、妊娠牛であれば分娩予定日などの聞き取りがとても重要です。分娩直後の場合は低カルシウム血症の他に分娩時の産道圧迫(難産で多い)による閉鎖神経麻痺を意識します。さらに牛床確認はキーポイントです。敷料交換したばかりであれば、まれにスリップによる股裂き(内転筋断裂)、打撲、骨折などが発生することがあるためです。
視診で注視するのは、褥瘡、呼吸様式、被毛状態(フケや脱毛の有無)、乗賀跡です。また個人的には繁殖雌牛はボディコンディションの確認が重要だと考えています。過去削痩牛且つ起立困難牛は標準体型以上のそれと比較し、加療による改善が認められないケースが多かったためです。これは栄養度や筋肉量との関係があるのでしょうか。はっきりとしたことは分かりません。

つづく
(長くなりそうなので触診、聴診、直腸検査の話は次回にしますね)

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