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笹崎直哉のコラム
牛体吊起について考えてみる その1

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2023年1月17日

臨床現場において起立不能、起立難渋牛に対し、牛体吊起を選択するケースがあります。しかし吊起する目的として「これだ!!」という明確なものがなく、経験的あるいは感覚的な判断により吊起を選択してしまうケースも少なくありません。そこで今回改めて牛体吊起の目的や必要性について学んでみました。
まず、そもそも起立に必要な要素は何かを考えてみます。
起立するという行動は、重力に逆らって床から身体を持ち上げることであり、そのための運動機能(筋力、関節、腱、靭帯、姿勢維持等)と統合機能(中枢機能、バランス感覚、意欲等)が失われていないことが必要となります。

これらを踏まえ、吊起の目的を挙げてみます。
・不十分な運動機能(筋力・平衡感覚等)の介助
・自力起立時に発生する疼痛ストレスの緩和
・血行障害や麻痺の改善
・姿勢を介助し起立意欲の発現および向上
・診断(症状把握)を目的とした吊起
・起立困難且つ子宮脱症例に対する(子宮脱整復時の)一時的な吊起

次に吊起の際の注意点を考えてみます。
・頭の支持
・床の滑り止め
・落下や股開き(内転筋断裂・蛙様姿勢)の予防
・正常な起立姿勢までの高さの確保
・吊起方法の選択(腰角1点のみを確保し後駆を優先的に吊り上げるのか、胸部と腰部の2点を確保し前後バランスよく上げるのか)
・器具による皮膚や筋肉等の圧迫虚血が生じないよう一度の吊起時間は可能な限り短くする

次回は実際に経験した症例を交え、牛体吊起について考えてみます。

つづく
 
 
 
 
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