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藤﨑ひな子のコラム
βーラクタム系①

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2023年1月13日

 朝晩はかなり冷え込みますが、日中は温かい日が続いていますね。週末の出水の最高気温は20℃にも昇るそうです。皆様、寒暖差にはお気を付けください。

 さて今回のコラムでは抗菌薬のβラクタム系についてお話ししたいと思います。世界で初めて発見されたとされるペニシリンもβラクタム系に属しています。そのβラクタム系ですが、細菌の細胞壁合成を阻害することによって殺菌効果を示します。
 βラクタム系のターゲットとなる細胞壁について少し詳しくお話しします。細菌の細胞壁は、細菌の細胞膜と接する厚さ10~30nmの膜状構造物で、細菌の細胞を取り囲みます。細菌はこの細胞壁があるおかげで、それぞれの細菌の形を維持することができるのです。動物で例えるなら骨格のようなものですね。細菌はグラム陽性菌とグラム陰性菌に大別されるのですが、細胞壁の構造はそれぞれで異なります。しかし、細胞壁の基本構造はペプチドグリカンです。ペプチドグリカン=ペプチド(アミノ酸が複数連なったもの)+糖です。
 グラム陽性菌とグラム陰性菌の細胞壁を図で表してみました。グラム陰性菌と比較してグラム陽性菌の細胞壁の基本構造となるペプチドグリカン層が厚いですね。βラクタム系はこのペプチドグリカンの合成を阻害することによって、殺菌するのです。動物で言えば骨の形成を邪魔する感じでしょうか。ペニシリンを例に挙げますと、ペプチドグリカン層が厚いグラム陽性菌に抗菌活性を示し、ペプチドグリカン層の薄いグラム陰性菌には一部抗菌活性を示すと記されています。このように細菌の構造等によって、抗生剤の効き方は変わってくるのです。


 
 
 
 
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