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笹崎直哉のコラム
切創と縫合

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2022年12月27日

今回のコラムは6年前のお話です。とても印象的な症例だったので、今回紹介させていただきます。
農家さんから『大きな傷ができてしまっている』という連絡を受け往診しました。

ご覧のように若齢子牛ではなく、24ヶ月齢の肥育牛でした。推定30~40cm大で切創で、出血も多く、何か鋭利なものに衝突してしまったのではないかと推測しました。
このタイプの切創であれば縫合が必要になります。縫合する場合、重要なのが切創部の洗浄です。傷口に侵入した被毛やノコクズ、粉塵などの異物を水道水などでしっかりと洗い落とす必要があります。これを怠ると高確率で化膿させてしまうためです。
今回の牛さんに対してはまず切創付近の剃毛を施し、傷の深いところまで時間をかけ洗浄を実施しました。異物の混入が無くなったことを確認し、縫合にうつりました。死腔を作らないよう意識し、皮膚縫合に関しては絹糸によるマットレス縫合を行いました。絹糸でのマットレス縫合は皮膚同士を比較的強く合わせることができるため今でも重宝しています。

無事縫合が終わり、抗生剤を数日間投与し、手術から10日後に抜糸を行いました。2ヶ月後に患部の状態を見に行くと

ご覧のように綺麗に治っていました。その後今回の牛さんは無事手術から4ヵ月後に出荷されました。今回お伝えしたかったのは『丁寧な洗浄、異物除去』です。今後もこのような症例に出会った場合はよく注意して処置していこうと思います。
 
 
 
 
今週の動画
子牛のナックルについて

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