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加地永理奈のコラム
ウシの脂肪肝とフォアグラの違い

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2022年12月21日

ウシの周産期疾病として脂肪肝は有名ですね。フォアグラも、フォア=肝臓、グラ=脂肪、というフランス語であるように、脂肪肝です。ただウシの脂肪肝とフォアグラは同じようで、その過程は異なります。
フォアグラは、カモやガチョウにエサをたくさん与えることでできる脂肪肝のことですね。脂肪肝はヒトでも糖や脂質、アルコールの過剰摂取が原因でおこる生活習慣病のひとつです。前回のコラムでもお話ししましたが、ヒトは(ガチョウも)食事中のグルコースを小腸から吸収して血中に取り込みます。しかし必要以上にグルコースがあると、今度は脂肪に変換して肝臓に蓄えるようになります。この仕組みでできるのがフォアグラであり、ヒトの生活習慣病です。
しかしウシの脂肪肝は周産期疾病として有名なように、主に分娩前後における採食量の低下や泌乳の開始、ストレスなどにより、体が低エネルギー状態に大きく傾いたときに引き起こされるものです。
前回、ウシは肝臓でグルコースを作り出すことに特化しているというお話もしました。例えばたくさんの泌乳のためにグルコースがたくさん消費されると、エサだけではエネルギー不足となります。そのときウシの体は足りない分を補うために、皮下脂肪などの脂肪組織を分解して肝臓に取り込み、そこでグルコースを作り出すようになります。しかしこの脂肪の動員が肝臓の処理能力を超えると、中性脂肪として肝臓に蓄えられてしまいます。これがウシでおこる脂肪肝です。
まとめると、フォアグラやヒトの脂肪肝は食べすぎのエネルギー過多でおこり、ウシはエネルギー不足で痩せると脂肪肝になるということです。同じ脂肪肝でも相反する状態なんですね。
 
 
 
 
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