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加地永理奈のコラム
ウシさんは低血糖

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2022年12月14日

ウシはそもそも低血糖である、というのはご存じですか?
ヒトの血糖値は空腹時で100mg/dl未満、食後で140ng/dl未満と言われるのに対し、ウシは45~75mg/dlが基準値となっています。
これはウシが草を食べる反芻動物であることが理由の一つです。
血糖値とは血中のグルコース濃度のことです。ヒトは、お米やパンなどに含まれるデンプンを、消化酵素によりグルコースへと分解し、小腸から吸収して血液中に取り込みます。そしてそれが各組織へと巡り、エネルギー源となります。そのため食後には血糖値がぐんと上昇しますね。
一方ウシでは、食べたエサに含まれるデンプンは、第一胃内の微生物により揮発性脂肪酸(VFA)へと分解され第一胃壁から吸収されるため、それより後ろの小腸でグルコースとして吸収されることはほとんどなく、食後に血糖値が急上昇することもありません。
その代わりにウシは、ヒトが消化できない草の繊維を、第一胃内の微生物を利用してVFAへと分解し、このVFAをエネルギー源として取り込むことができます。また、肝臓でグルコースを作り出す能力にも特化しました。糖新生といって、VFAや体脂肪を材料に、肝臓でグルコースに変換にしてエネルギー源とすることもできます。
つまりウシはエサから直接グルコースを得て生きているのではなく、第一胃内の微生物が作り出したVFAや自分で作り出したグルコースを利用しているため、ヒトの半分ほどの血糖値で生きているのです。ウシってヒトより低血糖なんだよ、と何かの折に豆知識として披露してみてください。

 
 
 
 
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