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藤﨑ひな子のコラム
クロストリジウム属③

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2022年11月18日

 日中の気温も20℃を切るようになり、寒さも一段と厳しくなりました。今日こそはウルトラライトダウンを買いに行こうと思います。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 前回はクロストリジウム属菌によって引き起こされる病気である、気腫疽と悪性水腫について紹介しました。今回は破傷風についてお話ししたいと思います。

5. 破傷風
 この病気は今まで紹介したエンテロトキセミアなどに比べて、聞きなじみのある疾患ではないでしょうか。ヒトの世界でも、なるべく裸足で走り回らないようにと注意喚起されることがありますね。この破傷風ですがウシでも発症します。
 破傷風菌( Clostridium tetani )の産生毒素によって引き起こされる神経疾患です。臨床症状としては、まず反射反応が亢進し、刺激に対する反応が強くなります。瞼や瞬膜の痙攣、しっぽが上がり続けることなどに続いて、全身の骨格筋(動かすことのできる筋肉)の強直性痙攣(全身の筋肉がとつぜん硬直する)が起こります。これを木馬様姿勢といいます。口の周りの筋肉の痙攣によって、口が開かなくなったりします。発病後5~10日後に呼吸困難で死亡します。ウシでは集中治療を施せば、ウマと比べて回復率が高いといわれています(ウマの死亡率およそ50%)。

 これまで3回にわたってクロストリジウム属菌によって引き起こされる病気について、それぞれお話してきました。どの病気も発症してしまうと致死的で、とてもやっかいな病気です。引き起こす細菌の種類は細かく言えば異なりますが(同じ細菌のものもあります)、どれも同じクロストリジウム属菌で、それらは身近な土壌に生息しています。ですから、完全に感染を防ぐことは難しいのです。しかし、感染していても発症しなければいいので、感染・発症を少しでも防ぐためにも、トキソイドワクチンを打ったり、ケガをさせないように飼育環境を整備したり、きれいなエサを与えたりなど様々な予防策はあります。さらにこれらの予防策は、クロストリジウム属菌に対してだけでなく他の細菌にも有効的だったりするのです。
 
 
 
 
今週の動画
When should we check cattle’s mouth ? どんなときに口腔内検査する?

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