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藤﨑ひな子のコラム
クロストリジウム属①

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2022年11月4日

 先月末出費が多いな~と思っていたら、奨学金の返済が始まっていました。ここでも新社会人の洗礼を受けています。寒さが徐々に厳しくなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 前回はワクチンの中でもトキソイドについてお話ししました。今回はそのトキソイドがターゲットとしている細菌、クロストリジウムについてお話ししたいと思います。
 クロストリジウム属菌はグラム陽性菌で、芽胞(強いバリア)形成をすることができ、偏性嫌気性の桿菌です。クロストリジウム属は川や海の泥、土壌と広く分布しています。クロストリジウム属菌の種類は現在で150種類程度知られています。
 クロストリジウム属菌が引き起こす感染症として、エンテロトキセミア、ボツリヌス中毒、気腫疽、悪性水腫、破傷風などがあります。

1. エンテロトキセミア
 ウェルシュ菌( Clostridium perfringens )の毒素による腸管の壊死と出血の症状を特徴とする急性の壊死性腸炎です。臨床症状は突発的な発熱と食欲廃絶、出血性下痢、呼吸困難があげられます。血尿を出すこともあるそうです。症状の進行は急性で、たいてい発症から1日以内に死亡します。血液検査をすると、白血球の減少と血小板数の減少を示すことが多いそうです。餌の切り替えが急なことや、寒さのストレスなどが引き金となって、腸の中でウェルシュ菌が異常増殖してしまうことが原因です。

2. ボツリヌス中毒
 ボツリヌス菌( Clostridium botulinum )の産生毒素によって引き起こされる神経疾患です。(数年前のドラマ・アンナチュラルでも出てきましたね ^^) 大量のボツリヌス菌に感染した状態では、短い潜伏期間で発症します。臨床症状としては、食欲廃絶と衰弱が顕著で、進行性の運動・筋肉麻痺、流涎、排尿障害、視力障害、咀嚼困難、嚥下困難があげられます。ほとんどが発症から3日以内で死亡します。原因は呼吸器系と心臓系の麻痺です。ボツリヌス菌は腐敗した植物や植物由来のものに広く生息しており、ボツリヌス菌に汚染された粗飼料中の毒素を食べて、感染・発症します。特に泥などで汚染されたサイレージを含む貯蔵牧草はボツリヌス菌が増殖して毒素を産生する環境として絶好の場所です。そのほか、傷んだ穀類。青草、乾燥でもボツリヌス菌が増え毒素が産生されます。鳥や動物の糞や死骸による飼料汚染、もしくはケガからの汚染も原因となります。

 残りのクロストリジウム属菌が引き起こす感染症は次回紹介したいと思います。
 
 
 
 
今週の動画
Body condition score ( part 5 ) UV法について その5

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