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戸田克樹のコラム
第373話「いつ肺炎になるのか―導入期編―」

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2022年10月27日

 無事に育成期を終えてセリを迎え、肥育農家さんへ移動されたときも肺炎のリスクが生じます。移動ストレスがかかり、さらに農場に到着してからも居住環境の変化、群の変化、餌の変化、管理者の変化と、とにかく一度にたくさんのものやことが変化するために、牛たちは多大なストレスにさらされます。過去に肺炎になっていた牛もこの強いストレスによって再発することがあるでしょうし、健康な牛であっても免疫機能が低下し、環境中のウイルスや細菌によって肺炎になる可能性が高まります。

 繁殖も肥育経営もされている一貫農場であれば、セリに出すために体重を乗せたり、飼い直しを行ったりする必要がありません。そうすると餌の種類の変更や、給与量の大幅な増減といった変化(=ストレス)を少なくすることができます。また、育成舎と肥育舎がそこまで離れていない場所であれば環境の変化も少なくなります。管理者が同じであれば、餌の給与時間や給与量などのちょっとした「クセ」が変わらないので食事の際のストレスも少ないかもしれません。何より、いつも見ている人間がエサをやるのであれば牛も安心なはずです。

 とはいえ、一般的にはセリで素牛を導入する肥育農場がほとんどだと思います。こうした場合、導入時にケアをしてあげることが必要です。抗生剤やワクチン、ビタミン剤、あるいは強肝剤などを投与するところが多いです。せっかく農場に来てくれた牛が病気になっては大変です。環境の大きな変化によって牛たちが強いストレスにさらされていることを意識し、病気にならないような導入時の疾病予防プランを各牧場でぜひ検討してあげてください。
 
 
 
 
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