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戸田克樹のコラム
第372話「いつ肺炎になるのか―離ハッチ(群管理)期―」

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2022年10月24日

分娩後は母親と同居するか、ハッチ管理に移行するため個体管理がメインとなります。しばらくすると、哺乳期であってもミルクロボットのある牛舎へ移動したり、離乳後に複数頭の群管理へと移行したりしますよね。この群管理への移行が肺炎の引き金になる可能性があるのです。

では、群管理に移行すると、何が問題となるのでしょう。これまでの母子同居、あるいはハッチ管理といった「個体」での生活から「群」での集団生活というダイナミックな変化が訪れることが子牛にとっては大問題なのです。

母子同居で管理されていた場合は母子分離という大きなストレスがかかります。それだけでなく、母親を求めて長時間鳴き続けるため、気管支粘膜に損傷が起きやすいという問題も発生します。そのほかにも見知らぬ個体との集団生活という慣れない環境がストレスとなり、離乳と同時にエサが変わる場合はそれもルーメン環境を変えるため体調が崩れる要因となりえます。

強いストレスや長期間受けるストレスは免疫機能を弱めます。もし、気管支粘膜に傷があればウイルスや細菌が簡単に感染することもあるでしょう。そして、一度感染が成立してしまったら、鼻水、涙、涎に多量の病原体が出てくるため、それを同居牛同士でくっつけあってしまいどんどん呼吸器病は広がっていきます。とくにRSウイルスが牛舎内に侵入してしまったときは最悪で、感染はあっというまに広がっていき、治療頭数がすさまじいものになってしまいます。この「感染急拡大」も群管理期にはついてまわる問題です…。

しかし、群管理への移行は避けては通れない道ですよね。ですから、その時期には子牛が強いストレスを受けること、感染が拡大しやすいリスクが存在していることを認識することがまず大切です。そして、少しでも呼吸器病に罹患する個体を減らし、感染を拡大させないための努力が必要になってきます。そこで重要になってくるのが適切なワクチネーションプログラムの構築や定期的な畜舎消毒、そして発育のよい個体をつくるために適切な管理を行っていく、といった日々の地道な作業になってくるのです。
 
 
 
 
今週の動画
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