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蓮沼浩のコラム
第709話:血液妊娠鑑定の未来

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2022年10月25日

 忙しくてまったくフナ釣りにいけていなかったのですが、先日お師匠さまと二人で久々に行ってきました。結果は・・・・お凸(オデコ)!!つまり、坊主ということです。しかし、温かい日差しの中でゆっくり釣り糸を垂れる時間は、心の洗濯になります。ちなみに師匠は3枚あげていました。さすがです。

 なぜ妊娠鑑定を行うのか?

 非常に重要な問いであります。いろいろなご意見があると思いますが、小生が一番重要なことと考えていることは・・・

 妊娠鑑定は、早期に妊娠マイナスを発見し、その牛さんを速やかに妊娠させるように取り組むためのきっかけとなる検査である。

 実は妊娠プラスを発見することが目的のように感じている方が意外と多いように思います。やはり妊娠プラスだと、嬉しいですからね。小生も妊娠鑑定で「入っとるよ~~」とか「妊娠プラスだよ~~」と農家さんに伝えるのが大好きです。ただ、実は妊娠プラスはある意味、そこまで重要ではないのです。だって、プラスであれば妊娠鑑定しなくて放っておいても子牛は生まれますからね。

 妊娠鑑定は、特別な場合を除いてあくまでも妊娠マイナスを発見するために行います。

 今は粗飼料価格や配合飼料価格が高騰しています。これまで以上に繁殖成績を向上させることが大切になってきていると思います。分娩間隔を短くすることの重要性が益々高まっているように思います。

 このような中で非常に重要になってくるのが早期妊娠鑑定。

 今はエコーが普及しているので、28日から鑑定ができます。多くの獣医さんが30日ぐらいでエコーによる妊娠鑑定を実施しているのではないでしょうか。しかし、ここで問題が一つあります。

 「いや~~~、30日でエコーを使って妊娠鑑定したんだけど、マイナスっていうのが非常に勇気いるんですよね~~。」
 「大きい黄体があるし、PG打つのちょっと怖い~~~。」

 新人獣医さんはこのように思う方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。

 先日、藤﨑獣医師も30日妊娠鑑定で相当悩んだと話していました。

 「いや~~~、農家さんにガン見されながら、なんだよくわからなくて滅茶苦茶時間かかってしまいました~~。難しいですね~~~。」

 小生もエコーを使った妊娠鑑定を30日ごろに実施する時はかなり気を使います。すぐに胎水が見えて、胎児や心拍も確認できればいいのですが・・・

 問題なのは、立派な黄体があるのに胎水や胎児が確認できないとき。
 子宮角の先端に胎児がいる場合が結構あります。そのために、子宮をくまなくエコーで探らないといけません。いろいろな角度からプローブを当てて、妊娠マイナスで問題ないと判断したら、今度はさらに子宮を返して最終チェックをします。この時、結構子宮角をいじることになります。流産させてしまったら大変なので、慎重かつ大胆に行わなくてはいけません。過肥の牛さんの場合はさらに大変です。

 できることなら、あまり早期妊娠鑑定で子宮をいじくりまわしたくない。

 このような時に活躍するのが、血液を用いた妊娠鑑定。

 28日から血液を使って妊娠鑑定ができます。EDTAに血をとり、その血液を検査することで、妊娠の判定ができます。一番重要で大切なことは、この検査は妊娠マイナスを見つけるために行うということです。妊娠プラスの場合は血液を用いた早期妊娠鑑定の場合、必ず後日再鑑定を行わなくてはいけません。しかし、妊娠マイナスの場合は一発で診断を下せます。30日ごろの妊娠鑑定で直腸検査を実施しないでマイナスを発見できることは画期的だと小生は思っています。

 どうしても獣医さんは技術屋さんなので、直腸検査にプライドを持っています。血液での妊娠鑑定なんて必要ないと思っている方も多いかもしれません。ただ、現在シェパードでは毎週血液妊娠鑑定を実施しています。ちょっと手間はかかりますが、非常に有効な手段だと思っています。まだまだ一般的な検査方法ではありませんが、今後必ず血液による妊娠鑑定は広がってくると、小生は確信しています。
 
 
 
 
今週の動画
【cow bruxism】なぜ牛は歯ぎしりする。

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