(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
藤﨑ひな子のコラム
抗菌剤の協力作用・拮抗作用

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2022年10月7日

 日曜日に体操服の小学生が登校しているな~と思ったら、運動会の時期ですね。日中の気温は一向に下がらないので、そのようなイベントで秋を感じます。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は卵の話を一時休止して、抗感染症薬についてお話ししたいと思います。
 微生物(細菌、ウイルス、真菌など)による感染症はヒトや動物の領域において最も多い病気であり、感染予防や治療の目的で多くの抗感染症薬が開発されています。抗感染症薬は抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、ワクチンなどの生物学的製剤に分類されます。よく耳にする抗生物質は抗菌薬の一種で、微生物によって産生され、微生物や他の細胞の発育を阻害する物質のことです。抗菌薬の特徴に関しましてはこちらの松本先生のコラム(抗生物質の特徴をおおざっぱに覚えとこう(耐性菌防止の意味でも))をご覧ください。
 この抗菌薬ですが、抗菌薬どうしで協力し合ったり、反対に拮抗しあったりする組み合わせがあります。一般的に細菌にとって重要な代謝経路(細胞壁合成やタンパク質合成など)において異なる段階にそれぞれ作用する2つの抗菌剤の相互作用は協力的です。例えばペニシリンとカナマイシン。ペニシリンはβ―ラクタム系の薬剤で細菌の細胞壁合成を阻害します。一方でカナマイシンはアミノグリコシド系の薬剤で細菌のタンパク質合成を阻害します。このように細胞壁合成、タンパク質合成と異なる代謝経路に作用するものを組み合わせることで、抗菌剤の効果が協力的になるのです。
 反対に拮抗作用は同じ代謝経路に働く抗菌剤同士を組み合わせることです。例えばペニシリンとセファゾリンです。ペニシリンは先ほども説明しました通りβ―ラクタム系の薬剤で、セファゾリンはセフェム系の薬剤です。種類は異なるのですが、作用点が同じで、どちらも細菌の細胞壁の合成を阻害します。同じ作用点同士の抗菌剤の組み合わせは、効果が減弱してしまうのです。
 しかし、作用点が異なる薬剤でも効果が減弱するものもあります。例えば、静菌的に作用するクロラムフェニコールを服用しているときにペニシリンのような増殖期に効果のある薬剤は効かなくなります。
 このように抗菌剤を複数使う際は効果が増強されたり、減弱したりするので注意が必要なのです。
 
 
 
 
今週の動画
Body condition score (part4) UV法について その4

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