(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
笹崎直哉のコラム
褥瘡(床ずれ)に対するアプローチ 後編

コラム一覧に戻る

2022年10月4日

先日人生初「ロウリュウ」を経験しました。熱波師さんがロウリュウ専用のタオルを使って生み出す熱風を全身で10分間浴びてきました。サウナ中に行われるロウリュウですが、皆さん「整う」を目的にやられています。私は特に水分補給せず(考えが甘い!!)チャレンジしたため脱水症状で死にかけるという結末を迎えました。熱波師さんにも心配されてしまいました。次こそは「整う」を実感したいですね。

さて褥瘡コラム後編です。褥瘡を発見し、その牛さんの現在の情報、過去の情報をもとにどのように進めていくべきか。ポイントを絞って3つ(飼養環境、治療、栄養面)紹介していきます。

◎飼養環境
まず意識したいのは牛床です。身体に圧がかかりにくい環境にしましょう。クッション性のあるものをお勧めします。またスムーズなリハビリテーションが可能になるよう滑りにくくしてあげることもお勧めです。例えばマット(お風呂マットも良いです)や畳などをセットし、その上に敷料を入れるなどです。
次に広いスペースを確保し、容易にリハビリテーションできるようにしましょう。

◎治療
まず患部に対するアプローチを考えてみます。患部は水道水または生理食塩水で洗浄し、壊死組織を綺麗に取り除いて(デブリードマン)、包帯で被覆してあげることをお勧めします。あれ?ポピドンヨードなどで消毒しないの?と思う方がいると思いますが、実は消毒液はバイ菌だけでなく、細胞に対して毒性をもっているという観点から、必須とされていません。明らかに汚染している場合のみ使用するなど、ケースバイケースで選択していくことがポイントです。

患部に対する塗布剤ですが、個人的にはモクールを塗布してあげると経過が良いように思います。一方白砂糖も効果があると聞きます。実際、人間で使用される褥瘡塗布剤の成分をみると砂糖が含まれているものがあります。

抗生物質(ペニシリンが無難ですね)の投与は数日間実施してあげるとよいでしょう。

患部のケアが完了したら、次にリハビリテーションですね。起立可の場合、定期的な介助起立と歩く運動をさせてあげましょう。起立不能の場合は体位変換を定期的に行うことが大切です。

◎栄養面
代用乳あるいは母乳と飼料(スターター)を下痢させないよう給与し、体力を作ってあげることですが一番のポイントです。また無理な増量は避け、負担のないようにしましょう。
次に抑えておきたいのが皮膚、傷の回復を目的にしたビタミンA、亜鉛、鉄分の給与です。これに加えビタミンCも推奨されています。添加剤として与える場合、個人的にはドン八ヶ岳AD3Eをお勧めしています。

以上いろいろな観点から紹介させて頂きました。前編でもお伝えしましたが「できること、できないこと」があると思いますので、できるところから進めてもらえれば幸いです。ちょうど私も現在、褥瘡で治療している子牛がいます。少しずつ良くなっています。早く治りますよ~に。


 
 
 
 
今週の動画
【検査】血液検査項目の紹介―赤血球編ー

|