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蓮沼浩のコラム
第703話:血液検査について その1

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2022年8月16日

 猛暑の影響でちょっとでも油断すると盆栽が枯れます。とくに出張中は要注意で、バタバタしているカミさんに電話で「盆栽に水やった??」と確認するのですが、超ウザイと思われています。

 検査の中で非常に重要なポジションを占めているのが血液検査です。ほぼ毎日、血液検査を獣医師の誰かがしています。実は、シェパードでは血液検査を外注しており、とてもお手軽に検査が実施できます。これは大変ありがたいことで、本当に助かっています。感謝の言葉しかありません。

 では、どのような検査項目をみているのでしょう。一応弊社は肉用牛専門の診療所ですので、乳牛ではなく、肉用牛を主眼において項目を設定しています。ざっくりと検査項目をあげてみましょう。

 白血球数、赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値、MCV、MCH、MCHC、血小板、総蛋白、尿素窒素、クレアチニン、ALP、CK、γ-GTP、GOT(AST)、総ビリルビン、総コレステロール、ナトリウム、クロール、カルシウム、鉄、マグネシウム、ビタミンA、蛋白分画

 上記の項目を主にみています。これらの項目を牛さんの状態に合わせてセレクトしています。時々ビタミンEやβ-カロテンの測定もしますがコストが高いのでなかなか実施できません。他にも極まれに特殊な検査をすることがありますが、ほとんどが上記の項目になります。本来であればアルブミンやグルコース、などもはかりたいのですが、現在は行っていません。アルブミンは検査機関が対応できないことから実施していません。A/G比などは予後判定に非常に重宝するのですが・・・。また、グルコースは採血してから時間が経過すると数値が低下してしまうことから正確なデータが得られないと判断し、特別な時以外は実施していません。

 小生はそれこそゲップが出るぐらいこれらの血液検査結果をみてきました。膨大な量です。牛さんの臨床症状と血液検査結果を合わせることで、肉用牛であればかなり診断の精度はあがると思っています。いかに早く診断を正確につけるか。非常に重要なことですね。

 血液検査の結果は1項目だけでは診断をつけることは非常に難しいです。ただ、単純に分娩後の低カルシウム血症を調べたり、尿毒症の状態をみたりするためにカルシウムや尿素窒素を単体でしらべることはあります。また、以前検査を実施して悪かった項目が改善しているかを調べるためには問題のあった検査項目だけをみることがあります。しかし、最初は可能な限り血液検査の情報が多いほうが良いと思っています。各検査項目のつながりを読み解き、臨床症状と合わせて判断することは獣医師にとって、とても重要な診断技術です。小生はこの謎解きのような診断が非常に好きです。毎朝のシェパードのカンファレンスでは獣医師が牛さんの治療報告に合わせて、血液検査結果も毎回報告しています。検査結果をもとにみんなでディスカッションすることでより良い治療ができると思っています。

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