(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
藤田真千子のコラム
No.44 胚培養士というお仕事

コラム一覧に戻る

2022年8月4日

牛の体外受精卵は、と畜場の卵巣または生体からOPU(経腟採卵)により卵子を採取した後、培養士さんに卵を育ててもらうことで生産されます。体外受精卵の生産において、胚培養士さんの存在は無くてはならないものです。

<ヒトの不妊治療>
体外受精はヒトの不妊治療の主流となっています。2019年には体外受精による出生数は6万598人と過去最多となりました。これは14人に1人が体外受精卵から誕生していることになります。また、今年の4月からは不妊治療において保険適用が開始され、胚培養などの生殖補助医療技術は今まで以上に医療として公的に認められるようになりました。不妊治療において、生殖補助医療技術は最も必要不可欠なものです。

現在、胚培養士という国家資格はありませんが、以下のような各学会の定める認定資格があります。
・日本卵子学会が認定する「生殖補助医療胚培養士」
・日本臨床エンブリオロジスト学会が認定する「臨床エンブリオロジスト」
胚培養士が一定の条件(臨床経験・学歴、学会への参加回数など)を満たすと試験を受けることができるそうです。取得後は数年ごとに更新が必要になります。条件である学歴には、大学の理系学部で生物学関連科目を習得した者 または 正看護師または臨床検査技師の資格を取得している者 etc… となっており、看護師や臨床検査技師の方が多いようです。

<ウシでは…>
牛の胚培養では、特に資格はありません。培養をおこなっている方にお話を伺うと最近は学生の頃に胚培養をおこなっていたという方が増えているようですが、全くやったことのなかった方も多いようです。
現在、世界的にみて移植数は体外受精卵が体内受精卵を上回っています。一方で日本では、黒毛和種が体内採卵で受精卵を生産しやすい品種ということもあり、体内受精卵が主流となっています。近年は体外受精卵も現場に普及してきており、これから徐々に浸透していくと思います。

これからウシの方でもヒトの方でもさらに需要が高まると思います。生物学系の学生さんで今後の進路に悩んでおられる方、胚培養士というお仕事はいかがでしょうか…!
 
 
 
 
今週の動画
【臍ヘルニア】牛さんにコルセットしてみた

|