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加地永理奈のコラム
抗酸菌

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2022年7月20日

今回は抗酸菌と呼ばれる細菌のグループについて、その特徴をお話しします。

抗酸菌とは、主にマイコバクテリウム属という細菌の分類です。菌種を見分けるために行う染色の過程で、酸アルコールで脱色されないという性質からこの総称が付けられました。
例として、結核菌や、前回のコラムでお話ししたヨーネ菌が有名です。

特徴として、菌体の外側にミコール酸という多量の脂質を含みます。このワックスのような成分がバリアとなり、様々な薬剤や環境に対して抵抗性を示します。酸アルコールで脱色されないのも、このためです。
また、本来であれば細菌を取り込んで攻撃するマクロファージの中に感染して増殖することができるため、免疫に対しても抵抗性を示します。そして、一度感染が成立すると、生涯にわたって感染が持続します。

一方で、周囲から栄養素を吸収することが苦手なのか、人工的に培養しても多くの菌種がゆっくりとしか発育しません。細菌のほとんどは培地で1~2日ほど発育させれば、肉眼で見えるかたまり(コロニー)を作ります。しかし結核菌は、専用の培地で発育させても4~6週間もかかります。抗酸菌は発育の遅い方が病原性も強い傾向があり、病態も同様に、ゆっくりと進行して慢性疾患となることが多いのです。
 
 
 
 
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