(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
「脂肪壊死症についてちょっと考えていることその3」

コラム一覧に戻る

2007年10月6日


 前回、脂肪壊死の対策で、「脂肪代謝改善剤を使いながら、カロリーを抑えていくやり方が一般的です」というお話をしました。「一般的」ってことは、一般的じゃないお話もあるわけです。
 実は、前回もお話ししたように、牛さんが急速に痩せていく時(分娩前後や泌乳期、肥育牛が食べなくなったとき、など)に脂肪壊死が急速に発達することが多いのです。僕は、この理由として、痩せていく時は脂肪を分解してエネルギーに変える働きがかなり無理をしなければならないので、脂肪の融解酵素や融解を促す物質が過剰に働いたりするのではないか?と考えているのです。脂肪の融解を促す物質は炎症の際にも出てきます。それで化膿症の際も脂肪壊死症が急速に発生する場合があるのではないかと考えているのです。
 ちょっと話が変わりますが、実際に分娩前に脂肪壊死が見つかっても、痩せていかないようにしたお母さん牛は、脂肪壊死があるままで分娩も次回の繁殖もこなし、脂肪壊死と同居したまま、あるいは自然に脂肪壊死が小さく軟らかく、あるものは消失して、繁殖母牛として生涯を全うするケースが多いのです。逆に、ボディーコンディションを落としてしまうと脂肪壊死が急速に発達して腸管を圧迫したりして廃用となるケースが多いのです。
|