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松本大策のコラム
これから夏本番!

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2022年7月11日

 暑い日が続きますね!人間もまいりそうですが、牛舎から逃げられない牛さんは、十分なケアをしてあげないと前回お話しした急性肺水腫だけでなく、人間と同じように熱中症を起こして重症になると死亡してしまうこともあります。

 熱中症は暑い日の午後から夕方にかけて発生し、気温が高いために牛さんの体温調節もうまくいかなくなり、心臓にも負担がかかるので肺水腫も起こし、聴診器で聞くと肺炎のような音が聞こえます。
 また呼吸も速いので、下手をすると肺炎と間違えて抗生物質と解熱剤を打って終わり、なんて治療になることもあります。
 しかしそれでは牛さんは助かりません。外気温や牛さんの脱水、苦しい表情などから熱中症を診断してあげる、もしくは迷ったら肺炎と熱中症の処置を併用する、くらいのことはこの猛暑の中では必須だと思います。

 さて、熱中症をみつけたらどうするか?まずは血液が酸性に傾いているので重曹注を点滴します。また夏バテを防ぐビタミンB群(レバチオニンとかレバギニン、フルスルチアミンやパンカル注)を点滴に加えます。出来たらビタミンADE剤(ゼノビタンとかフォルテ)も皮下注射しましょう。
 その後が重要なのですが、水で冷却してあげます。このとき、いきなり全身に水をかけるとショック死することもあるので、後頭部(体温調節中枢があります)を10分ほど冷やし、それから徐々に全身に水をかけてしっかり冷やします。体温が平熱に戻るくらいまで冷やさないとすぐに再発します。

 全身がしっかり冷えたら水気を切り、必ずタオルで全身の水分を拭きとってあげます。そうしないと体毛に残った水の層が断熱材となって再び鬱熱(発熱ではなく放熱がうまくいかない体温上昇)が起こるのです。

 これからの暑い日々、経営も苦しい世の中です。「このくらい」と放置せず、必ず牛さんを助けてあげましょうね。

 よろしければ以下のビデオもご覧下さい。チャンネル登録もよろしくお願いします!(笑)

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