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ゲストのコラム
おいしい牛肉を求めて、三方よしの取り組み(5)

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2012年4月3日

きたやま南山の楠本社長が探していたのは「赤身でおいしい牛肉」でした。

私にとっては渡りに船とでも申しましょうか、農家さんと取り組んでいることそのものですから、すぐに、近江牛繁殖肥育一貫でパワフルなおかあちゃん、木下その美さんを紹介することにしました。

私たちにとっては当たり前のことばかりの日常的なことでも楠本社長にとっては、すべてが目新しく、特に産まれたばかりの子牛が母牛から直接お乳をもらっている姿に驚かれていました。

私が木下さんに委託していた牛たちは、国産飼料を使い、放牧を取り入れて、とにかく牛さんに無理をさせずに自然に近い環境で育ててもらっていました。

当然、格付け的にはよくてもA3で赤身が多い肉質に仕上がりました。
しかし、これが驚くほどおいしくて、全国にリピーターのお客様が増えていったのです。
当店のホームページ(近江牛.com)には、木下さんの牛肉を求めるお客様で行列ができるようになりました。

楠本社長は、何度も何度も木下さんの牛舎へ通い、そして提案されたのが「赤身でおいしい牛肉」でした。
とにかく健康でおいしい赤身肉をつくってほしい。
自分が心底おいしいと思える安全で安心で、そしてお客様に自信を持って提供できる赤身肉をつくってほしい。

その願いがかなって、すばらしい肉質の牛肉ができるようになったのです。
しかし、味とは別に市場での評価は散々たるものでした。
牛飼い仲間からは、木下さんの能力不足さえ囁かれ始めました。
そりゃそうでしょう、私と知り合う前までは、A4やA5の発生率が高かったわけですから。

私は必死で、格付け評価の低い枝肉でも、A5レベルの価格で取引していただける顧客を探しました。

当然、苦戦が続いたわけですが地産地消ブームで思わぬ展開となっていくのでした。

(つづく)

(株)サカエヤ 代表取締役 新保吉伸
ホームページ: http://www.omi-gyu.com/

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