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藤田真千子のコラム
No.40 受精卵移植にチャレンジ~移植実践編~

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2022年6月30日

今回は移植の技術面のお話です。YTガン等の深部注入器を使用する想定で書いています。

<移植角に移植器をスムーズに入れるには>
頸管は通していただいて、問題はその先です。子宮体部は非常に短いので(図1,赤)、ちょっと行き過ぎると左右どちらかの角に入っている可能性があります。

まず一般的におこなわれている方法です。移植する側の角間膜(図1,青)付近を持ち上げ、移植側の子宮角を上側に保定します。移植角にスムーズに入るかと思います。また、頸管と移植する子宮角が直線になるように子宮の位置を調整しておくという方法も良いと思います(左角に入れたければ子宮全体を右に振るイメージ)。頸管に通す前に調整しておけば移植角に入りやすいです。ET研の先生がおっしゃっていた方法で、やりやすくて気に入っています。

授精の際に卵胞のある子宮角へ入れる練習をするのも良いですね。私は大学では子宮体部での注入をメインとして習いましたが、最近は卵胞側を狙って注入するのが主流でしょうか。

<内心チューブをまっすぐ送り出すには…?>
このチューブをまっすぐ伸ばすというのが初めは難しいと思います。軽く子宮角を保持したままチューブを伸ばしていきますが、注意しないとチューブがグネグネと曲がってしまい、深部への移植ができなくなります。
まず移植器を子宮角の中心まで誘導出来たら、移植器を少し引いてからチューブを送り出します。少し空間ができるため、子宮壁にぶつかりづらくスムーズに送り出せます。また、子宮角先端が下を向いている場合が多いので、移植器を少し下に向けてやるのも良いです。
・チューブがきちんと伸びているかの確認
まっすぐ挿入できていれば、保持している方の手にぶつかる感じはないと思います。逆に曲がっている場合はごつごつします。また移植器を引き抜くときのチューブの動きでも確認できるようですが、私はいまいちわからない…というか移植後すぐに子宮から手を放してしまうので確認できていません。

<移植時の失敗談>
・移植器にセットする際にシリンジを押しすぎて受精卵が飛び出してしまった:どのくらい空気を送ると先端まで来るか、確かめておくと良いです。
・シリンジが尻尾で吹っ飛ばされた:シリンジが外れると受精卵が流れ出てしまうので注意しましょう…。
・綿栓を押し棒で押し込みすぎて移植器に詰まった:押し込みすぎ注意です(;’∀’)。

現在はYTガンやモ4号が主流となり、昔よりは格段に移植が簡単になっていると思います。私も昔の移植器は使ったことがありません。しかし、たった一つの卵を受胎させなくては!というプレッシャーは計り知れません。人工授精よりもひとつひとつ手順を守って丁寧にやっていくことが大切なのかなと思います。少しでも参考になると嬉しいです(^o^)。
 
 
 
 
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