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藤田真千子のコラム
No.39 受精卵移植にチャレンジ

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2022年6月23日

移植技術について私が書くなど非常におこがましいところですが…始めたばかりのころによくわからなかった部分を書いてみようと思います。私は子宮角に入れるという感覚がつかめず、最初はてこずりました。移植の技術的な部分について詳しく書いているものってほとんどないですよね。先輩に教えてもらうというのが主流なのでしょうか。屠畜の子宮が使えたらよいですが、栃木では手に入れるのが難しく…。言われた言葉を想像しながらおこなっていました。
これから移植を始めようかなという方へ、少しでも参考になれば幸いです。
まずはレシピエント選定についてです。

<レシピエント選定>
・発情確認:発情の確認は必ずおこないます。同期化でもできる限りおこなうと良いです。自然発情で発情が弱い場合や、排卵障害を起こしたことのある牛は翌日の排卵確認もできると良いですね。
・移植前チェック:
子宮…強エコージェニックラインのないもの(子宮内膜炎の可能性)、収縮感のないものを選びます。あまり触りすぎると子宮内膜からのPG産生を促してしまうと言われているので、刺激しすぎないようにします。
黄体…サイズ・形状を確認します。エコーがあれば輝度も参考にします。血流がしっかりあれば輝度は低く黒っぽく見えます。反対に血流に乏しいと輝度は強くなり白っぽく映ります。カラードップラー機能付きのエコーで黄体血流も確認できると最高です、が、なかなか難しいですよね…。
私は発情が確認できている場合、エコーで18㎜以上の黄体があれば移植しています。黄体サイズは厳密にやるなら面積で判断するべきですが、現状最大直径で判断しています。和牛やF1でも黄体直径は20㎜程度あるものが多いなと感じています。小さすぎると排卵の遅れや体調不良の可能性があります。黄体サイズは肉用牛よりも乳牛の方がやや大きく、未経産牛の方が経産牛よりも小さい傾向があります。形状に関しては丸く、実質は弾力があり充実したものが良いとされていますが、小さく固い黄体でなければ形状による差はないようです。嚢腫様黄体であっても血中プロジェステロン濃度に差はなく、受胎率は変わらないことがわかっています。しかしたまに壁がうすく心配になるものもありますよね。この場合は面積を計算して、実質部分が直径18㎜の黄体分くらいあればよいかなと考えています。

つづく
 
 
 
 
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