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藤田真千子のコラム
No.38 産褥性子宮炎のお話

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2022年6月16日

分娩後1か月以上経って子宮に膿がたくさん溜まっているとか、子宮が硬くなっているような牛に出会ったとき、農家さんには難産や胎盤停滞がありましたか?と伺っています。難産や胎盤停滞がおこると細菌感染を起こしやすく、重症な場合は子宮炎になっている場合があります。子宮炎は和牛だとそんなに多くない疾患だと思いますが、重度の子宮内膜炎に移行する確率が高く、きちんと治療しておきたい疾患です。

まず、子宮炎とは、子宮の炎症が子宮筋層まで達している状態(図1)です。
一方で、子宮内膜炎は炎症が子宮内膜に限局しており、全身症状はありません。


図1

<産褥性子宮炎>
症状
産褥期の細菌感染による子宮の炎症で、全身症状(発熱、乳量減少や活力低下、腹膜炎の併発による背湾姿勢など)があることが多いです。子宮炎の場合、結合織が増殖し子宮壁が硬化・肥厚することが多く、重症なものでは子宮の周囲が癒着を起こすことがあります。

原因
分娩時~産褥期の子宮の細菌感染が直接的な原因です。難産、胎盤停滞、不衛生な分娩環境などにより起こりやすくなります。免疫力の低下なども関係します。

治療
抗生物質の全身投与・子宮内投与、悪露の排出 がおこなわれます。
子宮内に何を投与するかというところですが、産褥性子宮炎の場合、大腸菌やフソバクテリウムが関係していると言われているのでグラム陰性菌をターゲットにしている抗生物質がよいのかなと思います。私たちはオキシテトラサイクリン2gくらいの子宮内投与をおこなうことがありますが、経過は良い感じがします。

予後
炎症が一部に限局する場合には抗生物質の全身投与により治癒する可能性がありますが、慢性の子宮内膜炎に移行することが多いです。難産や胎盤停滞の処置を適切におこなうなど、細菌感染や損傷を防ぐことが必要です。

<その他の子宮炎>
精液注入器等による子宮壁の穿孔によっても、子宮炎が起こることがあります。

<悪露の排出はどれぐらいで止まるもの?>
悪露は正常であれば、10~14日で排出はなくなります。2週間以上続く場合には、治癒が遅れているので獣医師に相談してみてください。
 
 
 
 
今週の動画
Wagyu 和牛

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