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戸田克樹のコラム
第365話「耳を忘れないで」

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2022年6月13日

今回はたびたび見落とされる耳に関するエピソードです。「熱がありそう」という連絡を受けて診察を受けたとします。40度以上の発熱をしており、牛も元気がありません。しかし、聴診器を当てても明瞭な肺の副雑音(ラ音)は聞こえません。お腹周りの聴診をしても異常音はないです。

「あれれ~カゼかな~」と診断してしまいそうですよね。
でもここでちょっと待ってほしいのです。診察を終える前に「耳」をよく見て、さらによく触ってほしいのです。

片方の耳が下がっていませんか?

耳の毛が濡れてはいませんか?耳道に指を入れてみると膿や漿液が指先についてきませんか?

耳標を通した穴の周囲に膿がついていませんか?

熱しかない症例においては、「中耳炎」あるいは「外耳炎」であるにも関わらず、耳のチェックを怠ったがためにそれらを見落としてしまう可能性があります。明らかに耳が下がっていたり、どっさりと膿がついていれば気付けるのですが、中には「耳介は乾いていたのに耳道を洗ってみたら膿が出てきた」というケースも過去にはありました。

熱があるのに肺音がない場合は、積極的に耳のチェックも行ってみてください。また、抗生剤をいくつか試してみても体調がよくならない場合も耳洗浄を行い、耳道に膿の蓄積がないないかを念のため確認してみることをおススメします。この「診断的耳洗浄」で実は中耳炎だった、と判明したケースも過去にはあったのです。
 
 
 
 
今週の動画
【1:28】牛のあっかんべ~!? stick out tongue of cattle

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